DC-DCコンバータ|応用編
リニアレギュレータを使った電源設計のポイント リニアレギュレータICのソフトスタート
2023.11.28
リニアレギュレータICのソフトスタート
入力電源オン(起動)時に出力電圧を一定の時間で徐々に立ち上げることにより、出力コンデンサを充電するために流れる突入電流の最大値を抑えることができます。これがソフトスタートを用いる主要な目的です。
BDxxIC0シリーズのソフトスタートの立ち上がり時間は、IC内部で800μs(typ.)に固定されており、外部から立ち上がり時間の調整はできません。ソフトスタート時間TSSの定義は下図に示すように、ENがLowからHighにターンオンした時点を起点とし、出力電圧が規定値の95%に達するまでの時間としています。ソフトスタート時間のばらつきは、参考値で最小400μs、標準800μs、最大1200μsです。また、ソフトスタート時間は出力電圧に依存しません。なお、入力電源電圧及びEN信号の立ち上がり時間や、出力コンデンサの容量値によって起動時間が異なる場合がありますので、詳細は「電源オン時シーケンス」の記事を参照してください。

リニアレギュレータの電源オン時シーケンス
BDxxIC0シリーズの場合、VCC及びENの立ち上げ(電圧印加)順序はどちらが先でもかまいませんが、VCC及びENの立ち上がり時間や、出力コンデンサの容量値によって起動時間が異なってきます。以下の4つの条件における起動特性を示します。
- ・先にVCC、後にENの順でオンした場合
- ・先にEN、後にVCCの順でオンした場合
- ・VCCとENを同時にオンした場合
- ・出力コンデンサの容量が大きい場合
先にVCC、後にENの順でオンした場合

左の図は、VCCが立ち上がった後にENを急峻にターンオンしたときの起動特性です。 VOUTは、ソフトスタート機能により緩やかに立ち上がります。「ソフトスタート」でも説明したように、ソフトスタート時間 TSSは、ENがLowからHighへターンオンした時点を起点とし、出力電圧が規定値の95%に達するまでの時間と定義されます。
中央の図は、ENがHighレベルに到達する時間をソフトスタート時間より短くした場合の起動特性です。ソフトスタート動作は、EN電圧がしきい値を超えた時点から開始し、出力電圧は設定されているソフトスタート時間に従って上昇します。
最後に右の図は、ENがHighレベルに到達する時間をソフトスタート時間より長くした場合の起動特性です。EN電圧がしきい値を超えた時点からソフトスタート回路が動作開始し、出力電圧は設定されたソフトスタート時間に従って上昇します。
いずれの条件でも、EN電圧がしきい値を超えた時点からソフトスタートが開始し、EN電圧がHighレベルに達するタイミングには基本的に影響されません。EN電圧が急峻な場合は、EN電圧が立ち上がってしきい値を超えHighレベルに至るまでが非常に短いケースと考えることができます。
先にEN、後にVCCの順でオンした場合

左の図は、ENが立ち上がった後にVCCを急峻にターンオンしたときの起動特性です。VCCが立ち上がった時点からソフトスタート回路が動作開始し、出力電圧は設定されているソフトスタート時間に従って緩やかに上昇します。
中央の図は、VCCが電源電圧に到達する時間をソフトスタート時間より短くした場合の起動特性です。VCCが約1.2Vを超えた時点からソフトスタート回路が動作開始し、出力電圧は設定されているソフトスタート時間に従って上昇します。
右の図は、VCCが電源電圧に到達する時間をソフトスタート時間より長くした場合の起動特性です。VCCが約1.2Vを超えた時点からソフトスタート回路が動作開始し、出力が上昇を始めます。しかし、VCCの電圧上昇速度がソフトスタートの電圧上昇速度よりも遅いため、出力電圧 VOUTの上昇はVCC電圧値によって制限させます。このため起動時間(出力が設定値に至る時間)は、ソフトスタート時間を超えて長くなります。
いずれも、VCCが1.2V超えると出力はソフトスタートを開始しますが、VCCが出力設定電圧+動作に必要な入出力電圧差を超える電圧ならないと、出力は設定した電圧値にならない点に留意してください。
VCCとENが同時にオンした場合

左の図は、VCCとENを同時に急峻にターンオンしたときの起動特性です。VCCとENが立ち上がった時点からソフトスタート回路が動作開始し、出力電圧は設定されているソフトスタート時間に従って上昇します。
中央の図は、VCCとENをソフトスタート時間よりも短い時間で立ち上げた場合の起動特性です。EN電圧がしきい値を超えた時点からソフトスタート回路が動作開始し、出力電圧は設定されているソフトスタート時間に従って上昇します。
右の図は、VCCとENをソフトスタート時間よりも長い時間で立ち上げた場合の起動特性です。EN電圧がしきい値を超えた時点からソフトスタート回路が動作開始し、出力が上昇を始めます。しかし、VCCの電圧上昇速度がソフトスタートの電圧上昇速度よりも遅いため、出力電圧の上昇はVCC電圧値によって制限させます。このため起動時間(出力が設定値に至る時間)は、ソフトスタート時間を超えて長くなります。
出力コンデンサの容量が大きい場合
出力コンデンサの容量が増加すると、起動時の充電電流も増加していきます。出力電圧や過電流保護回路の制限値によって変わりますが、出力容量が数μFから数百μF前半では、充電電流は変化する一方で、ソフトスタート時間は一定で起動します。出力容量が数百μF前半以上では、充電電流の増加によって過電流保護回路が動作するため、充電電流は過電流保護回路によって制限されます。このため下図左側のグラフのようにソフトスタート時間を超えて起動時間が長くなります。この条件では出力容量が増えるに従って起動時間は長くなります。
下図右側は、途中まで過電流保護回路により電流制限を受けた状態で起動し、その後コンデンサへの充電がある程度完了すると充電電流が減るため過電流保護が解除され通常動作へ戻った状態を示しています。このように、出力コンデンサの容量によって出力の起動時間は変化するので、出力コンデンサの容量を大きくする場合は、実際の動作条件で起動時間を確認してください。

リニアレギュレータの電源オフ時シーケンス
BDxxIC0シリーズの場合、VCC及びENをオフする順序により、出力電圧の降下時間が異なります。以下の3つの条件における違いを示します。
- ・先にEN、後にVCCの順でオフした場合
- ・先にVCC、後にENの順でオフした場合
- ・VCCとENを同時にオフした場合
先にEN、後にVCCの順でオフした場合

左の図は、ENを急峻にターンオフしたときの出力VOUTのオフ特性です。ENをオフにすると出力トランジスタがオフになるため、入力から出力への電荷の供給がなくなります。出力コンデンサの電荷は、負荷によって放電され出力電圧が降下していきます。放電経路は負荷以外にも帰還抵抗(出力電圧設定抵抗)があります。出力電圧が降下しきった後でVCCをオフにします。負荷が単純な抵抗の場合の出力電圧降下時間は、次式で求めることができます。
\(T_{OFF} = -C_O \cdot R_L \cdot \ln\left(\frac{V_C}{V_O}\right) \, [sec]\)
CO:出力コンデンサ [F]
RL:負荷抵抗 [Ω]
VO:出力電圧 [V]
VC:最終降下電圧 [V]
右の図はENを緩やかにオフしたときの出力オフ特性です。EN電圧がしきい値を下回った時点で出力トランジスタがオフし、出力電圧が降下していきます。出力電圧の降下時間は同様に先に示した式で計算できます。
先にVCC、後にENの順でオフした場合

左の図はVCCを急峻にターンオフしたときの電源オフ特性です。VCCが急峻にオフすると、入力電圧と出力電圧の電位が逆転するため、出力コンデンサの電荷は出力トランジスタのボディダイオード(寄生ダイオード)を介して入力側へ放電されます。したがって、出力電圧は入力電圧に追従する形で急峻に降下し、VCCが0Vに達するとボディダイオードの順方向電圧分(約0.5V)を残して降下は緩やかになります。その後は負荷抵抗の時定数で電圧降下していきます。
中央の図は、VCCを緩やかにターンオフしたときの電源オフ特性です。VCCの電圧が降下し、入力電圧と出力電圧の電位が逆転するポイントに達すると、出力コンデンサの電荷は出力トランジスタのボディダイオード(寄生ダイオード)を介して入力側へ放電されます。したがって、出力電圧は入力電圧に追従する形で降下し、VCCが0Vに達するとボディダイオードの順方向電圧分の電圧(約0.5V)を残して降下は更に緩やかになります。その後は負荷抵抗の時定数で電圧降下していきます。
右の図は、VCCを緩やかにターンオフしている途中でENを急峻にターンオフしたときの電源オフ特性です。VCCの電圧が降下し、入力電圧と出力電圧の電位が逆転するポイントに達すると、出力コンデンサの電荷は出力トランジスタのボディダイオード(寄生ダイオード)を介して入力側へ放電されます。したがって、出力電圧は入力電圧に追従する形で降下します。VCC電圧が降下中にENを急峻にオフすると出力トランジスタがオフしますが、入力電圧と出力電圧の電位が逆転しているため、出力電圧は引き続き入力電圧に追従する形で降下します。ただし、負荷電流の電流値が大きいほど速く降下します。VCCが0Vに達するとボディダイオードの順方向電圧分の電圧(約0.5V)を残して降下は更に緩やかになります。その後は負荷抵抗の時定数で電圧降下していきます。
VCCとENを同時にオフした場合

左の図はVCCとEN同時に急峻にターンオフしたときの電源オフ特性です。VCCが急峻にオフすると、入力電圧と出力電圧の電位が逆転するため、出力コンデンサの電荷は出力トランジスタのボディダイオード(寄生ダイオード)を介して入力側へ放電されます。したがって、出力電圧は入力電圧に追従する形で急峻に降下し、VCCが0Vに達するとボディダイオードの順方向電圧分の電圧(約0.5V)を残して降下は緩やかになります。その後は負荷抵抗の時定数で電圧降下していきます。
右の図はVCCとENを同時に緩やかにターンオフしたときの電源オフ特性です。VCCの電圧が降下し、入力電圧と出力電圧の電位が逆転するポイントに達すると、出力コンデンサの電荷は出力トランジスタのボディダイオード(寄生ダイオード)を介して入力側へ放電されます。したがって出力電圧は入力電圧に追従する形で降下し、VCCが0Vに達するとボディダイオードの順方向電圧分の電圧(約0.5V)を残して降下は更に緩やかになります。その後は負荷抵抗の時定数で電圧降下していきます。
リニアレギュレータICの突入電流
「ソフトスタート」や「電源オン時シーケンス」の説明にも出てきた、突入電流に関して説明します。
起動時には、出力コンデンサに電荷を充電するための突入電流が流れます。この場合、出力電流値が推奨動作範囲の最大値を超えても、過電流保護(OCP)回路によって電流が制限されるため、動作としては問題ありません。ただし、過電流によりジャンクション温度TJが150℃を超えることがないことを確認しておく必要があります。短時間の過電流によるジャンクション温度は、過渡熱抵抗ZTHを使って次式で見積もることができます。
\(T_j = T_A + Z_{ΤΗ} \times P \, [℃]\)
TA:周囲環境温度 [℃]
ZTH:ジャンクションから周囲環境までの過渡熱抵抗 [℃/W]
P:ICの消費電力 [W]
PはICの消費電力で、次式により計算できます。
\(P = (V_{CC} – V_{OUT}) \cdot I_{OUT} + (V_{CC} \cdot I_{CC}) \, [W]\)
ただし、IOUT≫ICCの場合は次式で計算することができます。
\(P = (V_{CC} – V_{OUT}) \cdot I_{OUT} \, [W]\)
VCC :入力電圧 [V]
VOUT:出力電圧 [V]
IOUT:出力電流 [A]
ICC:ICの回路電流 [A]
HTSOP-J8パッケージにおいて、TA=60℃の環境で突入電流2Aが1ms間流れた場合を想定すると、1msでの過渡熱抵抗は以下のグラフから5℃/Wになります。

過渡熱抵抗を使ったジャンクション温度TJの見積もりは以下の式で計算できます。
\(T_j = T_A + Z_{TH} \cdot P\)
\( = 60^\circ\mathrm{C} + 5 \times \left(5\,\mathrm{V} – 3.3\,\mathrm{V}\right) \times 2\,\mathrm{A} = 77.0\,°C\)
ジャンクション温度TJが150℃以下なので、問題のないことがわかります。このように突入電流が1ms程度の短時間ではTJの上昇が小さいため、突入電流による温度上昇が問題になることは稀ですが、必ず確認してください。
DC-DCコンバータ
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応用編
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製品紹介
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