DC-DCコンバータ|応用編
電源シーケンス仕様①:回路と定数計算の例
2021.08.17
この記事のポイント
・電源シーケンス①を実現する回路は、DCDC IC×3、Power Good回路×4、ディスチャージ回路×3、ダイオードで構成される。
電源シーケンス仕様①に関して、前々回と前回で、電源投入時と遮断時のシーケンス動作について説明してきました。今回は、それらを実現する実際の回路例と各設定のための定数計算について説明します。
電源シーケンス仕様①:実際の回路と定数計算の例
以下に電源シーケンスを実現する回路例を示します。3系統のDC-DC 1~3は、スイッチングレギュレータまたはリニアレギュレータ(LDO)を想定しています。各DC-DCは、出力をオンオフ制御できるイネーブル(EN)ピンを持っています。

電源シーケンス①を実現する回路例
Power Goodブロック
Power Goodブロックは4つあり、電圧監視用ICであるBD4142HFVを使ってPower Good機能を実現しています。IC1とIC3は電源投入時のDC-DC出力電圧が設定値に立ち上がったことの検出用、IC2とIC4は電源遮断時の降下の検出用です。以下に、BD4142HFVの内部機能ブロックを含んだPower Good回路を示します。

BD4142HFVで構成したPower Good機能
このICは、0.5Vの基準電圧を備えたヒステリシス付きのコンパレータを内蔵しており(ICの機能ブロック部参照)、外付け分圧抵抗を使って検出したい電圧を設定することができます。DC-DC出力電圧の立ち上がりを検出するIC1とIC3には、DC-DCの出力電圧に合わせてこの設定が必要になります。検出電圧VPGOODは式1-1で計算することができます。
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シーケンス回路例のVOUT1は1.2Vで、IC1のPGOODは出力電圧の90%に到達した時点でフラグを出す設定にしています。検出電圧を95%のように高くしすぎると、負荷変動で出力電圧が一瞬低下した時にPGOOD出力が”L”になるため、後段のDC-DCが瞬断する問題が発生します。DC-DCの負荷変動と電圧低下(負荷応答)の特性を把握した上で、検出電圧を決定する必要があります。
90%の場合の検出電圧は1.2V×0.9=1.08Vになります。式1-1を基に抵抗値を求めることができます。回路例のIC1には計算された抵抗値がすでに示されており、式1-1のR2に該当するのはR6:15kΩ+R7:82Ω、R3はR8:13kΩです。これらを代入すると次のようになり、所望の1.08Vが得られる定数であることがわかります。
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式からわかるように、IN端子に印加されるR2とR3による分圧電圧が内部基準電圧の0.5Vになるように、VPGOODに対して抵抗値を決めます。電圧は抵抗比で決まりますが、この分圧抵抗もDC-DCの負荷となるため、10kΩ台の抵抗値で構成するのが適当です。ただし、R2とR3の合計は300kΩ以内となります。詳細はICのデータシートを参照してください。
基本の定数はこれで決まりますが、設計としては設定値(検出電圧)の許容差を確認する必要があります。BD4142HFVの検出電圧の許容差は±1.8%です。したがって、PGOODの範囲は88.4%(90%の-1.8%=90×0.982)から91.6%(90%の+1.8%=90×1.018)になります。
加えて、10mVのヒステリシスを持っているので、検出解除電圧は90%×(0.5V-10mV)÷0.5V=88.2%となり、範囲は88.2%×0.982=86.6%から88.2%×1.018=89.8%になります。
また、BD4142HFVはPGOODフラグ出力に遅延時間tDELAYを持たせることができます。その場合はDLY端子にコンデンサC2を接続します。遅延時間とコンデンサC2の値は式1-2で計算することができます。
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電源遮断時に動作するPGOODのIC2とIC4は、DC-DCの出力電圧が約0.5V以下に降下すると検出解除(PGOOD出力が”H”から”L”に変化)します。これはBD4142HFVに基本設定されている検出電圧をそのまま利用します。
ディスチャージ回路
ディスクリートで構成されたディスチャージ回路が各DC-DCに接続されています。下図が示すように、NPNトランジスタと抵抗で構成されています。1段目のトランジスタは単純なインバータ回路、2段目はオープンコレクタのスイッチです。2段目がオンすることで、DC-DC遮断時に主に出力コンデンサの残存電荷を放電し、速やかにVOUTを降下させます。2段目トランジスタのコレクタに直列に接続されている抵抗(下図ではR4)の値によって、出力電圧の降下時間を調整します。

ディスチャージ回路
ダイオード
シーケンス回路例各所にあるダイオードはロジック動作を司るためのものです。ダイオードの順方向電圧VFは、”L”レベルの信号電圧に影響を与えるので、”L”レベルとしての電圧値を確保するためにVFが低いショットキーバリアダイオードを使用します。
以上、電源シーケンス①を実現する回路全体と、DC-DC以外の周辺回路となるPower Goodブロック、ディスチャージ回路、ダイオードに関する説明になります。
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