DC-DCコンバータ|基礎編
同期整流型と非同期整流型の違い
2014.05.27
この記事のポイント
・代表的な2つの方式なので、構成と動作のちがいは把握しておく。
- 同期動作と非同期動作
- 連続モードと不連続モード
- 長所/短所
DC-DCコンバータの非絶縁型降圧スイッチングレギュレータには、前項で説明した非同期整流(ダイオード)式と同期整流式があります。非同期整流式は比較的古くから使われてきた方式で、スイッチングレギュレータとしては回路がシンプルですが、効率は80%を超える程度でした。その後、ノートPCなどバッテリ駆動で比較的大きな電力を必要とするアプリケーションがより高い効率を必要とするようになり、高効率が得られる同期整流式スイッチングレギュレータ用のICが続々と開発され、制御や回路が複雑な同期整流式が設計しやすくなったこともあり、徐々に主流になってきました。同期整流式は最大95%近くの効率が得られます。
図39と40は、二つの方式の回路の概要と動作を示しています。


図39


図40

図 41
違いは図が示す通り、非同期整流式は下側のスイッチにはダイオードが使われ、同期整流式ではS1と同様にトランジスタになっている点です。非同期整流式は、上側トランジスタのON/OFFによってダイオードに電流が流れたり流れなかったりします。これは、前項で説明した通りです。同期整流式は、基本動作は同じなのですが、下側スイッチのON/OFFも制御回路が行います。両方が同時にONすると、VINからGNDに直接的に電流が流れてしまいますので、必ず両方がOFFの時間、デットタイムと呼ぶタイミングを作るなど複雑な制御が必要になります。しかしながら、同期整流式が非同期式より効率が良いのは、下側のスイッチにトランジスタ(特にMOSFET)を使いダイオードで発生する損失を大幅に改善し、さらに最適なタイミング操作を行うことができるからです。
各方式の損失と効率についてもう少し説明します。いずれの回路も、電流がスイッチを介して流れるのでスイッチでの損失があり、それが効率に影響します。ダイオードの損失は順方向電圧VF、トランジスタの場合は飽和電圧やON抵抗になります。ダイオードのVFは電流によって増加し、VFが低いショットキダイオードでも1A時のVFは0.3~0.5Vほどになります。それに対して、例えばNch-MOSFETのON抵抗は50mΩ程度と非常に低く、電圧降下を計算すると1Aで50mVとダイオードのVFよりはるかに低いことがわかります。

図42
特に12Vから1.5Vに降圧するような降圧比が高い場合には、下側スイッチのON時間が長くなりサイクルの90%近くを占めることになります。非同期整流式では下側のスイッチはダイオードなので、約90%の期間、VF分の損失をともなう動作になります。1.5Vの出力に対し0.5Vもの損失をともなうわけで、効率への影響が大きくなります(図41参照)
もう一つ大きな違いをあげるとすれば、軽負荷時の振る舞いがあります。図42のオレンジと緑の矢印は、軽負荷時の非同期整流式(オレンジ)と同期整流式(緑)インダクタ電流を示しています。インダクタ電流は、図の様にスイッチングによって三角波になっています。負荷電流が非常に少なくなると、インダクタ電流がゼロクロスするレベルにまで降下します。この状態になると、非同期式はダイオードなので一方方向にしか電流を流すことができないため、オレンジの波形の様にマイナス領域に入った波形の電流は無くなって、電流波形としてはゼロ期間をもった、途切れ途切れの状態になります。これを不連続モードと言います。一方、同期式の方はトランジスタなので逆流が可能で、マイナス領域の電流が継続します。この動作を連続モードと言います。
不連続モードになると、スイッチ電圧にリンギングが発生して、高調波ノイズが放出されます。同期式は連続したインダクタ電流を維持することで安定した動作を継続します。ただし、逆電流は出力コンデンサから供給することになるので、効率が若干低下します。
全体としては、回路の複雑さ、コスト、効率、リンギングによる高調波ノイズのトレードオフを検討し、どちらの方式が適切かを判断してから選択することになります。
DC-DCコンバータ
基礎編
- 電源回路の代表的な7方式: 低雑音型から昇圧型まで!
- 昇圧型DC-DCコンバータのシャットダウン時の動作
- 昇圧電源の出力でのスイッチングノイズの低減 -はじめに-
- 昇圧型DC-DCコンバータの出力リップル電圧 -はじめに-
- 昇圧電源の負荷短絡によるトラブルと保護回路 -はじめに-
- 昇圧型DC-DCコンバータの最大出力電流 -はじめに-
- リニアレギュレータの基礎
- スイッチングレギュレータの基礎
- DC-DCの基礎 ーまとめー
- DC/DCコンバータとは?
設計編
評価編
-
損失の検討
- 同期整流降圧コンバータの制御IC消費電力損失
- 同期整流降圧コンバータのデッドタイム損失
- 同期整流降圧コンバータのゲートチャージ損失
- インダクタのDCRによる導通損失
- 電源ICの電力損失計算例
- 定義と発熱
- 同期整流降圧コンバータの損失
- 同期整流降圧コンバータの導通損失
- 同期整流降圧コンバータのスイッチング損失
- 損失の簡易的計算方法
- パッケージ選定時の熱計算例 1
- パッケージ選定時の熱計算例 2
- 損失要因
- スイッチング周波数を高めて小型化を検討するときの注意
- 高入力電圧アプリケーションを検討するときの注意
- 出力電流が大きいアプリケーションを検討するときの注意 その1
- 出力電流が大きいアプリケーションを検討するときの注意 その2
- 損失の検討 ーまとめー
- スイッチングレギュレータの特性と評価方法の概要
- 電源ICのデータシートの読み方:表紙、ブロック図、絶対最大定格と推奨動作条件
- スイッチングレギュレータの評価:出力電圧
応用編
- リニアレギュレータを使った電源設計のポイント
- LDOリニアレギュレータの並列接続とは
- リニアレギュレータの簡易的な安定性最適化方法
- 汎用電源ICで電源シーケンスを実現する回路
- リニアレギュレータを使った電源が起動しないトラブル事例1:手はんだによるICおよび周辺部品の破損
- フローティング動作のリニアレギュレータを使った電源設計のポイント
製品紹介
FAQ