DC-DCコンバータ|応用編
リニアレギュレータを使った電源設計のポイント リニアレギュレータICの電源回路例
2023.10.05
例として使うリニアレギュレータICについて
本章の説明に使うリニアレギュレータICは、出力電流1.0Aの「BDxxIC0シリーズ」です。幅広いラインアップで構成されるリニアレギュレータICファミリの中の1つのシリーズです。BDxxIC0シリーズは可変出力型と固定出力型で構成され、各2種類のパッケージが用意されています。HTSOP-J8パッケージに関しては、民生、産業、車載の3つのグレードが用意されています。機種名にある「xx」が「00」の場合は可変出力型を意味し、固定出力型の場合は設定されている出力電圧を示す2桁のコードが入ります。各詳細については、機種名のリンクからデータシートで確認願います。ここでは、基本的に民生グレードの可変出力型と固定出力型を例に説明していきます。
| パッケージ | 可変出力型 | 固定出力型 |
HTSOP-J8
|
BD00IC0WEFJ(民生) BD00IC0MEFJ-LB(産業) BD00IC0MEFJ-M(車載) |
BDxxIC0WEFJ(民生) BDxxIC0MEFJ-LB(産業) BDxxIC0MEFJ-M(車載) |
HVSOF6
|
BD00IC0WHFV(民生) | BDxxIC0WHFV(民生) |
■ブロック図

■基本アプリケーション回路

BDxxIC0シリーズは汎用性が高く、先に示した基本アプリケーション回路が示すように、入力、出力、FB/VO_S(可変型/固定型)、EN(出力オン/オフ切り替え)端子の一般的な構成です。(※FINは裏面エクスポーズドパッドを示す)
出力段トランジスタにPchのMOSFETを採用したLDO(低飽和型)で、出力電流は1A、基準電圧(可変型)及び出力電圧(固定型)の精度は±1%と高精度です。可変出力タイプは、外付け抵抗R1とR2を使用して0.8V~4.5Vまで任意の出力電圧を設定することができます。固定出力タイプは、1.0V~3.3Vまでの9種類が用意されています。
ICの破壊を防止する過電流保護回路、温度保護回路を内蔵しており、出力のオン/オフを制御するEN端子も備えています。出力コンデンサはセラミックコンデンサが使用できます。
以下、BDxxIC0シリーズの特長となります。
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リニアレギュレータICの代表的なアプリケーション回路例
上記のリニアレギュレータICを使った代表的なアプリケーション回路例を示します。
可変出力型
最初に可変出力型のアプリケーション回路例を示します。同時に2種類のパッケージのピン配置とピンの機能も示します。可変出力型は、外付け部品に入力コンデンサと出力コンデンサの他に出力電圧を設定する外付けの分圧抵抗が必要になります。
なお、パッケージとピン配置が異なっても、同名のピンの機能は同じです。後述する固定出力型と異なるのはFBピンになります。
| 可変出力型HTSOP-J8パッケージ BD00IC0WEFJ, BD00IC0MEFJ-LB, BD00IC0MEFJ-M |
可変出力型HVSOF6パッケージ BD00IC0WHFV |
|---|---|
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- ※HTSOP-J8パッケージの回路例にはENピン使用して出力をオン・オフする例を、HVSOF6パッケージの例にはENピンをVCCに接続してオン・オフ機能を使わない例を示した。どちらのパッケージでもENピンの機能は同じ。
- ※ピン配置図はトップビュー。
| HTSOP-J8 ピン番号 |
HVSOF6 ピン番号 |
ピン名 | 機能 |
|---|---|---|---|
| 1 | 1 | VO | 出力ピン 負荷に電力を供給。発振を防ぐためVOとGND間にコンデンサを接続する必要あり。 |
| 2 | 2 | FB | 出力電圧設定ピン 出力電圧フィードバックピン。このピンの電圧が0.8Vになるように動作するため、所望の出力電圧になる抵抗分割回路を接続。設定可能な出力電圧範囲は0.8V~4.5V。 |
| 3 | 3 | GND | グラウンドピン レギュレータ回路のグラウンド。 |
| 4 | – | N.C | 未接続ピン N.C ピンは内部回路に接続されていない。GNDに接続するかオープンにする。 |
| 5 | 4 | EN | イネーブルピン このピンをHighレベルにすると出力はオン、Lowレベルにするとオフする。 |
| 6, 7 | 5 | N.C | 未接続ピン N.C ピンは内部回路に接続されていない。GNDに接続するかオープンにする。 |
| 8 | 6 | VCC | 入力ピン ICの電源入力。入力を安定に保つため、VCCとGND間にセラミックコンデンサを接続する必要あり。コンデンサはピンの近くに配置する。 |
| E-Pad | E-Pad | FIN | エクスポーズドパッド 裏面のエクスポーズドパッドはリードフレームを介してチップに接続されており、放熱効率を高めるため銅箔面積が広いグラウンドプレーンにはんだ付けすることが推奨される。また、エクスポーズドパッドはパッケージ内部でサブストレートを介して電気的にGNDに接続。 |
固定出力型
続いて固定出力型のアプリケーション回路例、同時に2種類のパッケージのピン配置及びピンの機能を示します。固定出力型は電圧設定用の外付け分圧抵抗は不要なので、必要な外付け部品は入力コンデンサと出力コンデンサだけです。可変出力型の出力設定用FBピンはなく、代わりにVO_Sピンが備わっています。このピンは負荷端の出力電圧を検出するのに用います。詳細については、別途「ケルビン接続」の記事で説明します。なお、固定出力型についても可変出力型同様に、パッケージとピン配置が異なっても同名のピンの機能は同じです。
| 固定出力型 HTSOP-J8パッケージ BDxxIC0WEFJ, BDxxIC0MEFJ-LB, BDxxIC0MEFJ-M |
固定出力型 HVSOF6パッケージ BDxxIC0WHFV |
|---|---|
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- ※HTSOP-J8パッケージの回路例にはENピン使用して出力をオン・オフする例を、HVSOF6パッケージの例にはENピンをVCCに接続してオン・オフ機能を使わない例を示した。どちらのパッケージでもENピンの機能は同じ。
- ※ピン配置図はトップビュー。
| HTSOP-J8 ピン番号 | HVSOF6 ピン番号 | ピン名 | 機能 |
|---|---|---|---|
| 1 | 1 | VO | 出力ピン 負荷に電力を供給。発振を防ぐためVOとGND間にコンデンサを接続する必要あり。 |
| 2 | 2 | VO_S | 出力電圧検出ピン レギュレータ出力と負荷との間の配線抵抗で生じる電圧降下をキャンセルするためのピン。 |
| 3 | 3 | GND | グラウンドピン レギュレータ回路のグラウンド。 |
| 4 | – | N.C | 未接続ピン N.C ピンは内部回路に接続されていない。GNDに接続するかオープンにする。 |
| 5 | 4 | EN | イネーブルピン このピンをHighレベルにすると出力はオン、Lowレベルにするとオフする。 |
| 6, 7 | 5 | N.C | 未接続ピン N.C ピンは内部回路に接続されていない。GNDに接続するかオープンにする。 |
| 8 | 6 | VCC | 入力ピン ICの電源入力。入力を安定に保つため、VCCとGND間にセラミックコンデンサを接続する必要あり。コンデンサはピンの近くに配置する。 |
| E-Pad | E-Pad | FIN | エクスポーズドパッド 裏面のエクスポーズドパッドはリードフレームを介してチップに接続されており、放熱効率を高めるため銅箔面積が広いグラウンドプレーンにハンダ付けすることが推奨される。また、エクスポーズドパッドはパッケージ内部でサブストレートを介して電気的にGNDに接続。 |
可変出力型リニアレギュレータICの出力電圧設定方法
ここから説明する項目は設計の際に知っておく必要があります。いずれもそれほど複雑なものではありませんが、注意事項などは押さえておいてください。この章は可変出力型の出力電圧の設定方法についてです。固定出力型は出力電圧を設定済みなので、使用する出力電圧のICを選ぶことになります。
最初に可変出力型のアプリケーション回路例を示します。同時に2種類のパッケージのピン配置とピンの機能も示します。
\(V_{out} = 0.8 \times \frac{R_1 + R_2}{R_2} \, [\text{V}]\)
R1とR2の合計は1kΩ~90kΩの間で設定することを推奨します。

上図が示すように、このICはFBピンがグラウンドを基準にして0.8Vになるように、VO端子に電圧を出力します。R2の電流I2は0.8V/R2で計算でき、R1の電流はR2の電流にFBピンのバイアス電流IFBを加えたものになります。ただし、FBピンの内部回路(エラーアンプ)はMOSFETゲート入力なので、バイアス電流IFBはごくわずかなため無視できます。出力電圧VOUTは次式のように、0.8VにR1とI2を掛け合わせた電圧を足したものになります。
\(V_{out} = 0.8 + R_1 I_2 = 0.8 + R_1 \frac{0.8}{R_2} = 0.8 \times \left(1 + \frac{R_1}{R_2}\right)\)
注意点として、実装するPCB(プリント基板)のパターン配線は最適な負荷レギュレーション性能を達成するために、出力電圧設定抵抗R2の下側を直接GNDピンに接続してください。
次に、代表的な出力電圧の設定抵抗値を表に示します。もちろん上記の式で抵抗値を求めることができますが、これらの表を利用することもできます。この例では、公称抵抗値はE24系列を使用しています。「最小部品数で設定」の表は、E24系列の公称値から計算値に最も近い抵抗を各1本ずつ計2本として、ある程度の出力電圧誤差を許容する選択です。「高精度に設定」は、複数の抵抗を組み合わせて計算値に合わせ込み、出力電圧精度を求める選択を示しています。
抵抗R1とR2は同じ種類のものを使用してください。種類が異なると許容差や温度特性の違いでR1とR2の比率が変化し、出力電圧精度が悪化する可能性が高くなります。また、0402 mm(01005 inch)サイズ以下のチップ抵抗を使用する場合は、抵抗の定格電力と定格電圧および最高使用電圧に注意して選択する必要があります。

リニアレギュレータICのケルビン接続
出力電圧の負荷端での電圧降下を補正できるケルビン接続について説明します。固定出力型については、ICの種類(ピン機能)によってケルビン接続ができるものとできないものがあることに留意してください。
リニアレギュレータICの出力にケルビン接続を用いることで、出力ピンから負荷までの電圧降下を補正して、設定した出力電圧値を負荷に供給することができます。これをリモートセンシングと呼ぶこともあります。可変出力型と固定出力型では方法が異なるので、別々に説明します。
可変出力型のケルビン接続
通常、出力電圧設定抵抗がVOピンに接続されていれば最適なレギュレーションが得られます。ただし、負荷電流が大きい、負荷までの配線幅が狭い、負荷までの距離が遠いといったような条件の使用では、PCBの薄膜配線の抵抗により電圧降下が生じる可能性があり、そのため負荷端の実際の電圧が設定電圧より低下します。
この電圧降下は、出力電圧設定抵抗分割器の上側を負荷に可能な限り近づけて接続することで補正することができます。インピーダンスが高い抵抗分圧器はICの近くに配置し、インピーダンスが低い抵抗上側の配線を負荷まで引き延ばすことでノイズ耐性が得られます。ICのGND側も負荷電流による電圧降下の影響を受けないように、負荷まで独立したグラウンド配線で接続します(下図参照)。

※ILARGEは基板配線を流れる大きな電流、VOおよびGNDラインに示した抵抗記号は配線抵抗示す。
なお、ICの出力コンデンサCOUTは負荷の近くに配置し、また急峻な負荷応答に対応する場合は大容量コンデンサCBULKを追加して配置してください。
固定出力型のケルビン接続
固定出力型は出力電圧設定抵抗が内蔵されており、標準的な3端子レギュレータなど多くの場合、抵抗分割器の上側がIC内部で出力に接続されています(下記ブロック図のVO_Sピンがなく内部でVOに接続されている)。この構成のICではケルビン接続はできません。BDxxIC0シリーズは、抵抗分割器の上側がVO_Sピンに出ており、可変出力型と同様にケルビン接続ができるように設計されています(下図参照)。

※ILARGEは基板配線を流れる大きな電流、VOおよびGNDラインに示した抵抗記号は配線抵抗示す。
VO_Sピンもしくは同様の機能のピンを持たないレギュレータICで負荷までの電圧降下が問題になるケースでは、このようなピンを持つレギュレータICに変更することで解決できます。
リニアレギュレータICの出力電圧誤差
出力電圧は必ず誤差を持っています。例えば固定出力型の場合、出力電圧の仕様の最大値と最小値になりそうですが、他の関連パラメーターの許容差も含めて考える必要があります。
固定出力型の出力電圧の最大誤差は、出力電圧許容差、入力安定度許容差、負荷安定度許容差を合算したものになります。各最大値と最小値を基に3つのパラメーターの組み合わせになるので少々複雑ですが、最悪値を想定するために必要な検討事項です。
出力可変タイプの場合は、基準電圧(VFB)許容差に出力電圧設定用外付け抵抗の許容差を掛けた値(下記式参照)、入力安定度許容差、負荷安定度許容差を合算したものになります。
可変出力型の出力電圧許容差
最小値
\( V_{{OUT(MIN)}} = V_{{C(MIN)}} \times \frac{R_{{1(MIN)}} + R_{{2(MAX)}}}{R_{{2(MAX)}}} \, [\text{V}] \)
最大値
\( V_{{OUT(MAX)}} = V_{{C(MAX)}} \times \frac{R_{{1(MAX)}} + R_{{2(MIN)}}}{R_{{2(MIN)}}} \, [\text{V}] \)
DC-DCコンバータ
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