DC-DCコンバータ|応用編

フローティング動作のリニアレギュレータを使った電源設計のポイント リニアレギュレータの端子保護

2023.03.03

ICの端子に逆電圧や過電圧などが印加されると、出力電圧が立ち上がらなかったり、ICが損傷したりする可能性があります。以下に示すような条件が想定される場合には、該当端子に対する適切な保護が推奨されます。それぞれの保護方法について説明していきます。なお、以下で示す回路や動作は、BA1117シリーズに関するもので、他のリニアレギュレータには当てはまらない場合があるので留意願います。

出力電圧が入力電圧より高くなる場合 → 逆電流バイパス

出力コンデンサの静電容量が大きい回路において、入力電源をOFFした後も出力コンデンサに電荷が残る場合や、入力電源がオフするときのスピードが非常に速い場合は、入出力電圧より出力電圧の方が高いという逆転状態になる可能性があります。この場合、IC内の寄生素子を介して出力から入力へ逆電流が流れます。寄生素子は動作を意図したものではないので、素子の劣化や破壊が起こる可能性があります。

対策として、逆電流がIC内部を通らないように外部に逆電流バイパスダイオード(D1)を接続するか(下図左)、逆電流阻止ダイオード(D1)を入力側に挿入します(下図右)。

出力電圧が入力電圧より高くなる場合 → 逆電流バイパス

ただし、入力ラインをオープンにしてOFFする方式の場合(下図)は、逆電流の値がICのバイアス電流のみになりわずかなため、寄生素子の劣化や破壊は起こらないためバイパスダイオードは不要です。

出力電圧が入力電圧より高くなる場合 → 逆電流バイパス

バイパスダイオードは、IC内部の寄生素子よりも先にON(導通)する必要があります。BA1117シリーズのリニアレギュレータでは内部寄生素子のON電圧は約0.7Vですので、これよりも順方向電圧VFが低いものが必要になります。逆方向定格電圧は、使用する入出力電圧差よりも大きいもの(ディレーティング80%以下)を選択します。順方向定格電流は、逆流電流値よりも大きいもの(ディレーティング50%以下)を選択します。これらの条件から、バイパスダイオードにはショットキーバリアダイオードを推奨します。ショットキーバリアダイオードは一般的に逆方向電流が大きなものが多いので、この値が小さいものを選択します。

出力負荷が誘導性の場合→ 出力の逆電圧保護

出力負荷が誘導性の場合は、出力電圧がオフになった瞬間に誘導性負荷に蓄積されたエネルギーがグラウンドへ放出されます。ICのVOUT端子とADJ端子間には内部に静電破壊防止ダイオードがあり、そのときこのダイオードに電流が流れるためICが破壊する場合があります。これを防止するため、静電破壊防止ダイオードと並列にショットキーバリアダイオード(下図D1)を接続します。

出力負荷が誘導性の場合→ 出力の逆電圧保護

代表的な誘導性負荷としては、モータ、ソレノイド、リレーなどがあります。負荷がモータの場合は、モータの逆起電力により内部ダイオードに電流が流れますので外部に保護ダイオードが必要です。また見落としがちな誘導性負荷として、ICの出力端子と負荷が長いワイヤーで接続されている場合のワイヤーのインダクタンスがあります。出力オフ時に過渡的な逆電圧が発生していないか、オシロスコープで波形を観測してください。

入力電源極性逆接続の可能性がある場合 → 入力の逆電圧保護

入力に電源を接続するとき、不注意などによりプラスとマイナスを逆接続した場合は、ICのVIN端子とADJ端子間の静電破壊防止ダイオードに電流が流れるため、IC及び抵抗R2が破壊する場合があります(下図左)。

入力電源極性逆接続の可能性がある場合 → 入力の逆電圧保護

逆接続対策として最も簡単な方法は、ショットキーバリアダイオードか整流ダイオードを、入力電源ラインに直列に挿入します(上図右、逆接続対策1)。正しい接続では、ダイオードの順方向電圧VFの電圧降下があるため、VF×IOの電力損失が発生するので、バッテリー駆動の回路には向きません。挿入するダイオードは、整流ダイオードよりもショットキーバリアダイオードの方がVFは低いため、損失は多少小さくなります。ダイオードはこの損失により発熱するので、許容損失に十分なマージンがあるものを選択します。逆接続時はダイオードの逆方向電流が流れますが、これはわずかな値です。

逆接続対策2(下図左)の回路は、ダイオードを電源に対して並列に接続する方法を示しています。IC内部の静電破壊保護ダイオードよりも早く(低い電圧で)ONする必要があるため、VFが低いショットキーバリアダイオードを使用します。正しい接続ではダイオードがない場合と同じ動作になります。

入力電源極性逆接続の可能性がある場合 → 入力の逆電圧保護

逆接続時には、電源の全電流がこのダイオードに流れる状態が続くため大きな発熱が発生し、入力電源の電流容量が大きい場合は破壊に至ります。この回路は短時間のうっかりミスから回路を保護する目的か、入力電源に過電流保護回路が付いていることが前提になります。この保護回路で更に安全性を高めるのであれば、逆接続対策3(上図右)のように、入力電源ラインに直列にヒューズやポリスイッチを追加します。ヒューズはメンテナンスが必要ですが、より確実に回路を保護できます。

逆接続対策4(下図左)は、P-ch MOSFETを入力電源ラインに対して直列に挿入する方法です。MOSFETのドレイン-ソース間に示してあるダイオードは、MOSFETのボディダイオード(寄生素子)です。正しい接続ではP-ch MOSFETがONするため、ここでの電圧降下はMOSFETのオン抵抗と出力電流IOを掛けた値になり、逆接続対策1で示したダイオード挿入による電圧降下よりもはるかに小さいため、電力損失は小さくなります。逆接続時は、MOSFETはONしないため電流は流れません。MOSFETのゲート–ソース間電圧(ディレーティングを考慮した)が定格電圧を超える場合は、逆接続対策5(下図右)のようにゲート–ソース間に分圧抵抗を追加して、ゲート–ソース間電圧を下げてください。

入力電源極性逆接続の可能性がある場合 → 入力の逆電圧保護

ホットプラグを想定する場合 → ホットプラグ対策

供給側(入力)電源がONの状態でICの入力に配線を接続すると、配線のインダクタンス成分と接続プラグの金属接触により、ICの入力ラインにパルス波形の電圧(サージ)が発生します。このサージ電圧がICの絶対最大定格を超えると、ICが破壊することがあります。IC入力端子にサージ電圧が入らないように、TVS(Transient Voltage Suppressor)ダイオード(下図D1)でサージを吸収することで保護することができます。

ホットプラグを想定する場合 → ホットプラグ対策

異電源間に負荷が存在する場合 → 逆電流バイパス

下図に、異なる電源間に負荷が存在する例を示します。このような場合、各電源の電源立ち上がり・立ち下がりタイミングが同じではないため、負荷を通して他方の電源出力端に電流が流れ込みます。その場合、ICの出力端子の電圧が入力電圧より高くなる逆電圧状態になるので、逆電流バイパスダイオード(D1D2)が必要です。これは、「出力電圧が入力電圧より高くなる場合 → 逆電流バイパス」で説明したアプローチと同じです。

異電源間に負荷が存在する場合 → 逆電流バイパス

正負電源(両電源)の場合

以下に、BA1117を正電圧用に使った正負電源の例を示します。このような正負電源では、それぞれの電源立ち上がりスピードが違うため、正負間に負荷があると、先に立ち上がった電源が負荷を通じてもう一方の出力から電流を引くため、出力に逆電圧がかかります。ICの損傷と、出力電圧が立ち上がらなくなることを防止するためにVFが低いショットキーダイオード(D1D2)を出力とGND間に接続する必要があります。

正負電源(両電源)の場合

DC-DCコンバータ

基礎編

設計編

評価編

応用編

製品紹介

FAQ