DC-DCコンバータ|基礎編

昇圧電源のシャットダウン時の注意点 昇圧型DC-DCコンバータのシャットダウン時の動作

2023.11.28

この記事のポイント

・ダイオード整流方式の昇圧型DC-DCコンバータでは、シャットダウン時に出力は0Vにならず、VIN-VFの電圧が出力される。

・同期整流方式の昇圧型DC-DCコンバータでもハイサイドスイッチに使用されるFETの寄生ダイオードによりシャットダウン時に出力にVIN-VFの電圧が出漁される。

・シャットダウン時に出力に低い電圧が出力されるため、負荷回路の誤動作の発生や負荷回路と電圧設定抵抗に流れる電流により待機時消費電力の増加などが発生する。

・バックゲート制御機能をもつ同期整流方式の昇圧型DC-DCコンバータは寄生ダイオードのキャンセルによりシャットダウン時の出力を0Vにでき、負荷回路の誤動作や待機時消費電力の増加を防止する。

はじめに

降圧型DC-DCコンバータはシャットダウンしてスイッチング動作を停止することにより出力電圧がゼロになり負荷回路への電力供給が停止し、供給電源からの電力消費は電源回路のシャットダウン時の自己消費電流だけとなります。しかし、昇圧型DC-DCコンバータではほとんどの場合、スイッチングの停止により昇圧動作が止まっても供給電圧であるVINが昇圧されないまま出力に出てしまいます。出力に接続されている回路に流れてしまう電流により、電源回路のシャットダウン時の自己消費電流より多くの電流が流れてしまうことがあり待機時消費電流の算出に問題が発生することがあります。

昇圧電源のシャットダウン時の出力電圧の影響と対策を「ダイオード整流方式の昇圧型DC-DCコンバータの場合」、「同期整流方式の昇圧型DC-DCコンバータ」、「電圧設定抵抗に流れる電流による待機時消費電流」、「バックゲート制御をもつ同期整流方式」で説明します。

ダイオード整流方式の昇圧型DC-DCコンバータ

ダイオード整流方式ではシャットダウンによりスイッチングが停止していてもVINからインダクタ、整流ダイオードを経由する経路があるためにVOUTに(VIN-VF)の電圧が出力されてしまいます。負荷回路に電圧が印加されたままになるため、VINの電圧によっては負荷回路が電流を消費してしまい待機時消費電流を増加させます。また、負荷回路への中途半端な低電圧の印加による誤動作を発生するトラブルの原因となる場合もあり、出力遮断回路が必要になることもあります。

ダイオード整流方式昇圧型DC-DCコンバータの停止時の出力

同期整流方式の昇圧型DC-DCコンバータ

同期整流方式の場合ハイサイドスイッチにFETが使用されており、シャットダウン時にはゲート駆動がなくなるのでハイサイドスイッチはオフ状態にはなります。しかし、FETの持つ寄生ダイオードにより電流パスができてしまうのでVOUTにはやはり(VIN-VF) の電圧が出力されてしまいます。

同期整流方式昇圧型DC-DCコンバータの停止時の出力

電圧設定抵抗に流れる電流による待機時消費電流

電源には出力電圧を設定する抵抗による電圧ディバイダがVOUTに接続されています。この抵抗には動作時にはVOUT÷(R1+R2)の電流が流れています。電源のシャットダウン時にはVOUTの電圧は低下しているので電圧設定抵抗に流れる電流は減少しますが待機時消費電流には加算されてしまいます。抵抗値を大きくするとこの電流を減少させることができますが、この抵抗にはエラーアンプの入力バイアス電流の100倍以上の電流を流す必要があります。この電流を流しておかないと温度などによる入力バイアス電流の変動による出力電圧VOUTの変化が大きくなり、出力電圧の誤差に影響がでてしまうのでむやみに抵抗値を大きくすることはできません。2000年以前の電源ICはバイポーラ製品が多く、入力バイアス電流が数10μAレベルだったために電圧設定抵抗に数mAレベルの電流を流す必要がありました。しかし、2000年以降の電源ICはCMOS製品が一般的となり、入力バイアス電流がnAの単位まで低下して電圧設定抵抗に流す電流も数10μAのレベルまで減少しました。それでも携帯機器などで電源供給元が電池の場合、μAレベルの電流消費も稼働時間に影響をあたえて問題となる場合もあります。

動作停止時の電圧設定抵抗による電流消費

電圧設定抵抗による電流消費をなくして待機時消費電流を減少させるために、シャットダウン時に電圧設定抵抗をGNDから切り離すスイッチを内蔵している電源製品もあります。

バックゲート制御をもつ同期整流方式

同期整流方式でハイサイドスイッチのFETをIC内部に取り込んだ電源ICでは、FETのバックゲートにバイアスを印加する回路を構成し、これを制御して寄生ダイオードをキャンセルすることができるようにした製品があります。FETの寄生ダイオードによる電流経路を遮断することができるので、シャットダウン時に出力電圧が0Vとなり、負荷回路の誤動作を防止して電源リセットも確実になり、電圧設定抵抗や負荷回路による電流消費もゼロにすることが可能となります。

バックゲート制御機能による出力遮断

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