DC-DCコンバータ|応用編
リニアレギュレータを使った電源設計のポイント リニアレギュレータICの効率と熱設計
2023.10.31
リニアレギュレータの効率の求め方
リニアレギュレータを使った電源の効率は、次の式から求めることができます。基本的に効率ηは、出力電力(POUT)/入力電力(PIN)であることは、リニアレギュレータでもスイッチングレギュレータでも変わりません。数式は、以下のようになります。
\(
\eta = \frac{P_{OUT}}{P_{IN}} = \frac{V_{OUT} \times I_{OUT}}{V_{CC} \times (I_{OUT} + I_{CC})} \times 100[%]\)
VCC:入力電圧 [V]
VOUT:出力電圧 [V]
IOUT:出力電流 [A]
ICC:ICの回路電流 [A]
条件として、ICCがIOUTに対して非常に小さい(ICC≪IOUT)場合は、次式で計算できます。
\(\eta = \frac{V_{OUT}}{V_{CC}}\times 100[%]\)
式より、入出力間の電圧差が小さいほど効率は良くなることがわかります。ただし、入出力電圧差は動作特性に影響を及ぼすことを加味して決める必要があります。
リニアレギュレータICの熱設計
リニアレギュレータICによる電源設計において熱設計は必須であり、重要な検討事項になります。ここでは、熱特性パラメーターΨJTを使った熱計算と、熱抵抗θJAを使った熱計算について説明します。
信頼性が高い動作を確保するには、ICのジャンクション温度TJが、絶対最大定格TJMAXの150℃*1を超えないようにする必要があります。TJの見積もりは、次の2つの方法で算出できます。
*1:BDxxIC0シリーズの場合。ICごとに必ずデータシートで確認すること。
熱特性パラメーターΨJTを使った熱計算
表面温度測定によってICのTJを見積もるには、熱特性パラメーターΨJTを用いて計算します。熱電対をパッケージ上面中心にしっかり固定することができれば、パッケージ上面中心温度TTを精度良く測定できるため、熱特性パラメーターを用いて精度の高いTJを算出することができます。
\(T_J = T_T + \psi_{JT} \times P[℃]\)
TT:パッケージ上面中心温度 [℃]
ΨJT:ジャンクションからパッケージ上面中心までの熱特性パラメーター [℃/W]
P:ICの消費電力 [W]
PはICの消費電力で次式により計算できます。
\(P = (V_{CC} – V_{OUT}) \times I_{OUT} + (V_{CC} \times I_{CC}) [W]\)
VCC:入力電圧 [V]
VOUT:出力電圧 [V]
IOUT:出力電流 [A]
ICC:ICの回路電流 [A]
また、連続的に流せる最大出力電流は次式で算出することができます。
\(I_{OUT(MAX)} = \frac{T_{J(MAX)} – T_T}{(V_{CC} – V_{OUT}) \times \psi_{JT}} [A]\)
TJMAX:ジャンクション温度の絶対最大定格 [℃]
TT:パッケージ上面中心温度 [℃]
ΨJT:ジャンクションからパッケージ上面中心までの熱特性パラメーター [℃/W]
VCC:入力電圧[V]
VOUT:出力電圧 [V]
熱抵抗θJAを使った熱計算
熱抵抗θJAを用いて、簡易的にTJを見積もることができます。
\(T_J = T_A + \theta_{JA} \times P[℃]\)
TA:周囲環境温度 [℃]
θJA:ジャンクションから周囲環境までの熱抵抗 [℃/W]
P:IC の消費電力 [W]
また、連続的に流せる最大出力電流は次式で算出することができます。
\(I_{OUT(MAX)} = \frac{T_{J(MAX)} – T_A}{(V_{CC} – V_{OUT}) \times \theta_{JA}} [A]\)
TJMAX:ジャンクション温度の絶対最大定格[℃]
TA:周囲環境温度 [℃]
θJA:ジャンクションから周囲環境までの熱抵抗 [℃/W]
VCC:入力電圧[V]
VOUT:出力電圧 [V]
熱特性パラメーターΨJTと熱抵抗θJAの実測値例
下表に示す熱特性パラメーターΨJT及び熱抵抗θJAは、特定のPCB(プリント基板)で測定した値です。放熱性能は、PCパラメーター銅箔のレイアウト、部品配置、筐体形状、周囲環境などの影響で変わるため、熱特性パラメーター、熱抵抗も変化します。したがって、実機基板における値とは異なることを考慮する必要があります。

また、測定に使用したPCBの仕様を以下に示します。すべてHTSOP-J8パッケージ用で、順に1層(1s)基板(JESD51-3/-7準拠)、2層(2s)基板(JESD51-3/-5/-7準拠)、4層(2s2p)基板(JESD51-3/-5/-7準拠)となります。



DC-DCコンバータ
基礎編
- 電源回路の代表的な7方式: 低雑音型から昇圧型まで!
- 昇圧型DC-DCコンバータのシャットダウン時の動作
- 昇圧電源の出力でのスイッチングノイズの低減 -はじめに-
- 昇圧型DC-DCコンバータの出力リップル電圧 -はじめに-
- 昇圧電源の負荷短絡によるトラブルと保護回路 -はじめに-
- 昇圧型DC-DCコンバータの最大出力電流 -はじめに-
- リニアレギュレータの基礎
- スイッチングレギュレータの基礎
- DC-DCの基礎 ーまとめー
- DC/DCコンバータとは?
設計編
評価編
-
損失の検討
- 同期整流降圧コンバータの制御IC消費電力損失
- 同期整流降圧コンバータのデッドタイム損失
- 同期整流降圧コンバータのゲートチャージ損失
- インダクタのDCRによる導通損失
- 電源ICの電力損失計算例
- 定義と発熱
- 同期整流降圧コンバータの損失
- 同期整流降圧コンバータの導通損失
- 同期整流降圧コンバータのスイッチング損失
- 損失の簡易的計算方法
- パッケージ選定時の熱計算例 1
- パッケージ選定時の熱計算例 2
- 損失要因
- スイッチング周波数を高めて小型化を検討するときの注意
- 高入力電圧アプリケーションを検討するときの注意
- 出力電流が大きいアプリケーションを検討するときの注意 その1
- 出力電流が大きいアプリケーションを検討するときの注意 その2
- 損失の検討 ーまとめー
- スイッチングレギュレータの特性と評価方法の概要
- 電源ICのデータシートの読み方:表紙、ブロック図、絶対最大定格と推奨動作条件
- スイッチングレギュレータの評価:出力電圧
応用編
- リニアレギュレータを使った電源設計のポイント
- LDOリニアレギュレータの並列接続とは
- リニアレギュレータの簡易的な安定性最適化方法
- 汎用電源ICで電源シーケンスを実現する回路
- リニアレギュレータを使った電源が起動しないトラブル事例1:手はんだによるICおよび周辺部品の破損
- フローティング動作のリニアレギュレータを使った電源設計のポイント
製品紹介
FAQ