DC-DCコンバータ|応用編

リニアレギュレータを使った電源設計のポイント リニアレギュレータICの端子保護

2023.10.31

使用する条件や環境によって、リニアレギュレータICの端子を保護する必要があります。ここでは想定される6つのケースと、それぞれの保護回路の例を示します。

リニアレギュレータICの端子保護

ICの端子に逆電圧や過電圧が印加されると、出力電圧が立ち上がらない、さらにはICが損傷する可能性があります。次の状況が想定される場合は、適切な端子保護をすることを推奨します。

  • 1. 入出力電圧の条件が逆転する場合 → 逆電流バイパス
  • 2. 出力負荷が誘導性の場合 → 出力の逆電圧保護
  • 3. 入力極性を逆接続する可能性がある → 入力の逆電圧保護
  • 4. ホットプラグを想定する場合 → ホットプラグ対策(入力のサージ保護)
  • 5. 異電源間に負荷が存在する場合 → 逆電流バイパス
  • 6. 正負電源(両電源) → 出力の逆電圧保護

1. 入出力電圧の条件が逆転する場合 → 逆電流バイパス

出力コンデンサの容量が大きい回路において、入力電源をオフした後も出力コンデンサに電荷が残る場合や、入力電源が低下する速度が非常に速い場合には、入出力電圧より出力電圧の方が高いという逆転状態になる可能性があります。この場合、IC内の寄生素子を介して出力から入力へ逆電流が流れます。寄生素子は動作を意図したものではないので、素子の劣化や破壊が起こる可能性があります。

対策として、逆電流がIC内部を通らないようにするため、外部に逆電流バイパスダイオードを接続します(下図左側)。ただし、入力ラインをオープンにしてオフする方式の場合(下図右側)は、逆電流の値がICのバイアス電流のみになりわずかなため、寄生素子の劣化や破壊は起こらないためバイパスダイオードは不要です。

逆電流バイパスダイオード/入力をオープンにした場合

バイパスダイオードは、IC内部の寄生素子よりも先にオンする必要があります。MOSFET型リニアレギュレータでは内部寄生素子のオン電圧は約0.6Vなので、バイパスダイオードはこれよりも順方向電圧VFが低いものを選択する必要があります。

逆方向定格電圧は、使用する入出力電圧差よりも大きいもの(ディレーティング80%以下)を選択します。順方向定格電流は、逆流電流値よりも大きいもの(ディレーティング50%以下)を選択します。これらの条件を考慮すると、整流ダイオードやショットキーバリアダイオードを推奨します。

ただし、ショットキーバリアダイオードは一般的に逆方向電流が大きなものが多いので、この値が小さいものを選択します。逆方向電流が大きいと、ENピンにより出力をオフにしても、入力から出力へ流れるダイオードのリーク電流(逆方向電流)が多く流れるので、逆方向電流の値が小さい(おおむね1μA以下)ものを選択する必要があります。

2. 出力負荷が誘導性の場合 → 出力の逆電圧保護

出力負荷が誘導性の場合は、出力電圧がオフになった瞬間に誘導性負荷に蓄積されたエネルギーがグラウンドへ放出されます。ICの出力ピンとGNDピンの間には内部に静電破壊防止ダイオードがあり、このダイオードに大電流が流れるためICが破壊される場合があります。これを防止するため、静電破壊防止ダイオードに並列にショットキーバリアダイオード(D1)を接続します(下図)。

誘導性負荷の電流経路(出力OFF時)

また、ICの出力ピンと負荷が長いワイヤーで接続されている場合は、ワイヤーのインダクタンスが誘導負荷になっている可能性があります。出力オフ時に過渡的な逆電圧が発生していないか、オシロスコープで波形を観測してください。

その他にも、負荷がモータの場合は、モータの逆起電力により同様の電流が流れますのでダイオードが必要です。

3. 入力極性を逆接続する可能性がある → 入力の逆電圧保護

入力に電源を接続するとき、不注意によりプラスとマイナスを逆接続した場合は、ICの入力ピンとGNDピン間の静電破壊防止ダイオードに大電流が流れるため、ICが破壊される場合があります(「入力を逆接続したときの電流経路」参照)。逆接続対策として最も簡単な方法は、以下の「逆接続対策1」のようにショットキーバリアダイオードか整流ダイオードを電源と直列に接続します。

入力を逆接続したときの電流経路/逆接続対策1

正しい接続では、ダイオードの順方向電圧VFの電圧降下があるため、VF×IOの電力損失が発生しますので、入力電源がバッテリの場合には適しません。整流ダイオードよりもショットキーバリアダイオードの方がVFは低いため、損失は多少小さくなります。ダイオードは発熱するので、許容損失に十分なマージンがあるものを選択します。逆接続時はダイオードの逆方向電流が流れますがこれはわずかな値です。

次に、ダイオードを電源に対して並列に接続する対策方法を示します(逆接続対策2)。IC内部の静電破壊保護ダイオードよりも早くオンする必要があるため、VFが低いショットキーバリアダイオードを使用します。正しい接続ではダイオードがない場合と同じ動作になります。逆接続時は、電源の全電流がダイオードに流れる状態が続くため大きな発熱が発生し、入力電源の電流容量が大きい場合は破壊に至ります。この回路は短時間のうっかりミスから回路を保護する目的か、前段の電源に過電流保護回路が付いていることが前提になります。

この保護回路で更に安全を重視するならば、「逆接続対策3」のように電源に直列にヒューズを接続します。ヒューズのメンテナンスが必要ですが、より確実に回路を保護できます。

逆接続対策 2/逆接続対策 3

次に示す「逆接続対策4」は、P-ch MOSFETを電源に対して直列に接続する方法です。MOSFETのドレイン-ソース間にあるダイオードは、ボディダイオード(寄生素子)です。正しい接続ではP-ch MOSFETがオンするため、ここでの電圧降下はMOSFETのオン抵抗と出力電流IOを掛けた値になり、「逆接続対策1」のダイオードによる電圧降下より小さいため、電力損失が小さくなります。逆接続時は、MOSFETはオンしないため電流は流れません。MOSFETのゲート–ソース間(ディレーティングを考慮した)定格電圧を超える場合は、「逆接続対策5」のようにゲート–ソース間を抵抗分割してゲート–ソース間電圧を下げてください。

逆接続対策 4/逆接続対策 5

4. ホットプラグを想定する場合 → ホットプラグ対策(入力のサージ保護)

供給側(入力)電源がオンの状態でICの入力に配線を接続すると、配線のインダクタンス成分と接続プラグの金属接触によりパルス波形が発生します。このサージ電圧がICの絶対最大定格を超えるとICが破壊されることがあります。ICの入力ピンにサージ電圧が印加されないように、TVS(Transient Voltage Suppressor)ダイオード(下図D1)を使ってサージを吸収することで保護することができます。

ホットプラグ対策

5. 異電源間に負荷が存在する場合 → 逆電流バイパス

異なる電源間に負荷が存在する場合は、各電源の立ち上がり、立ち下がりタイミングが同じではないため、負荷を通して他方の電源出力端へ電流が流れ込みます。その場合、ICの入出力間で逆電圧が発生するので、逆電流バイパスダイオード(下図D1D2)が必要です。

異電源間の電流経路とダイオードの入れ方

6. 正負電源(両電源) → 出力の逆電圧保護

以下のような正負電源では、それぞれの電源立ち上がりスピードが違います。正負間に負荷があると、先に立ち上がった電源が負荷を通じてもう一方の出力から電流を引くため、出力に逆電圧がかかります。ICの損傷と、出力電圧が立ち上がらなくなることを防止するために、VFが低いショットキーダイオード(D1D2)を出力とGND間に接続し、出力の逆電圧保護をする必要があります。

正負電源のダイオードの入れ方と負電源レギュレータが先に立ち上がった場合の電流経路

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