DC-DCコンバータ|基礎編
LDOの基礎
2025.08.12
低ドロップアウトレギュレータ(以下、LDO)は、半導体デバイスの一種であり、入出力電圧の差が小さい状態でも動作できるリニアレギュレータの総称です。LDOは、わずかな入出力電圧差でも安定した出力を得られるのが特長で、バッテリー駆動のモバイル機器や、省電力・小型化を重視するアプリケーションで広く採用されています。具体的には、リチウムイオン電池から直接回路を駆動するときに利用されるケースが代表的な例です。
本記事では、LDOの仕組みや回路構成、設計時に考慮すべき規格や特性などを解説するとともに、LDOを導入するうえで押さえておきたいポイントを整理します。

LDOとは何か?(定義・基本原理)
LDOは入力電圧と出力電圧の差(入出力電圧差)が小さくても一定の出力を維持できるリニアレギュレータです。一般的な3端子レギュレータと比較すると、必要となる入力電圧の余裕が小さい点が大きな特徴となります。ここでは、LDOの定義や歴史的な背景などを簡潔に振り返り、なぜ多くの機器で採用されるのかを解説します。
LDOの意味と由来(“Low Dropout”の語源・定義)
LDOは「Low Dropout Regulator」の略称であり、ドロップアウト電圧が低いことを示します。ドロップアウトとは「安定したレギュレーションを維持するために必要な最小の入力電圧と出力電圧の差」を意味します。一般的な従来型リニアレギュレータは、出力電圧より数V程度高い入力電圧を必要とする場合が多いですが、LDOはこの差が数百mVやときには数十mVまで抑えられる製品も存在します。多くのLDOは、内部にパス素子(バイポーラトランジスタやMOSFET)や誤差増幅器、保護回路を備え、それぞれの規格(入力電圧範囲・出力電流範囲など)を満たすかどうかが選定時の重要なポイントです。
例えば、3.3Vの出力を得る場合に4.0V程度しか入力を取れない条件でも、LDOなら安定動作する可能性が高いです。この「低ドロップアウト」という特徴は、電力効率や熱損失の軽減に関わるため、省エネや小型化が求められる機器において重要な役割を果たします。
従来型リニアレギュレータの違い
リニアレギュレータは、内部でパス素子(トランジスタなど)を用いて、入力電圧から余分な電圧を熱として捨てることで安定した出力を実現します。従来のリニアレギュレータは、入力電圧と出力電圧の差が大きい場合に設計しやすい一方、入力と出力の差が小さくなると正常に動作しにくいという面があります。
これに対してLDOは、線形(抵抗)領域で低オン抵抗を維持しやすいトランジスタを採用するなどの工夫により、入力・出力電圧差が小さくても動作できるようになっています。具体的には、バイポーラトランジスタやMOSFETをソースフォロワ構成やエミッタフォロワ構成などで動作させることで、ドロップアウト電圧を数百mV以下に抑えます。
従来のリニアレギュレータの中には、出力電圧よりも2V以上高い入力電圧が必要なものが多く、(入力電圧 – 出力電圧)が大きい状況を前提とした設計になっています。一方、LDOはバッテリー駆動のように入力電圧が低下する用途でもギリギリまで規定の出力を維持しやすく、省エネルギーや低発熱といった面でメリットをもたらします。
LDOが注目される理由(低ドロップアウト、省電力、小型化など)
LDOが着目される要因としては、以下のような点があります。
- 省電力:ドロップアウト電圧が低いほど無駄に消費される電力が少なくなる。
- 熱設計簡略化:入力電圧と出力電圧の差を抑えることで、発生する熱量が減り、小型ヒートシンクで済む場合がある。
- 小型化とバッテリー動作:モバイル機器などで電池の電圧が下がった場合でも動作が維持しやすくなる。
- ノイズ面:スイッチングレギュレータと比較して高周波ノイズを発生しにくい。
結果として、バッテリー駆動アプリケーションから通信機器、産業機器まで幅広く利用されています。ここでは概念的な理解を中心にまとめましたが、次のセクション以降で回路構成や動作原理をさらに詳しく見ていきます。
LDOの回路構成と動作原理
LDOは、フィードバック制御により出力電圧を一定に保つという点では通常のリニアレギュレータと同様です。ただし、入力出力電圧差を小さく抑えるために、内部構成や使用されるトランジスタの種類、保護機能などでいくつかの工夫が施されています。本セクションでは、LDOの主要な回路ブロックを紹介しながら、なぜ低ドロップアウトが可能なのかという仕組みを解説します。
主要ブロック(パス素子・誤差増幅器・保護機能)の概要
LDOの構造自体は比較的シンプルです。以下の主要ブロックを組み合わせて、出力電圧を一定に維持します。

- パス素子(Pass Element)
バイポーラトランジスタやMOSFETを使用し、入力から出力への電流を制御。最近では、内部に工夫を施してチャージポンプや制御回路を組み込み、低いゲートソース電圧でも駆動可能にしたLDOも多く見られます。 - 誤差増幅器(Error Amplifier)
出力をモニタしてリファレンス電圧と比較し、パス素子を制御。ここでの利得特性や応答速度が、精度やトランジェント応答に大きく影響します。 - 保護機能
過電流保護、過熱保護、逆流防止などの機能を内蔵し、LDO自体の安全性と負荷側の保護を行います。
ドロップアウト電圧の仕組み
LDOの特徴であるドロップアウト電圧は、パス素子が電流を供給しつつも正常に制御できる最小の差分電圧として定義されます。例えばPNPトランジスタを使用するLDOの場合、エミッタ-コレクタ間電圧やベース-エミッタ間電圧が、飽和近くで動作するときの総和がドロップアウト電圧を左右します。ここで簡単なモデル式を示します。
\(V_{dropout}≈V_{CE(sat)}+V_{overhead}\)
- VCE(sat):飽和領域のコレクタ-エミッタ間電圧
- Voverhead (control margin):誤差増幅器がパス素子を飽和させないために確保する余裕電圧(温度・プロセスばらつきやループ利得低下を吸収する数十 mV 規模)
一方、MOSFETベースのLDOは、Pチャネル又はNチャネルのMOSFETを低ドロップアウト領域で駆動できるよう、内部でゲート制御回路を工夫しています。例えばチャージポンプなどによりゲート電圧を補うことで、外部から見た入力-出力差が数百mV以下でも動作可能としています。負荷電流がIout、MOSFETのオン抵抗がRDS(on)の場合、以下のように表せます。(ここに制御回路で必要な最低限の電圧差が加わるケースもあります。)
\(V_{dropout}=I_{out}×R_{DS(on)}\)
-
バイポーラLDOの場合
- 飽和電圧VCE(sat)をデータシートやトランジスタ特性から読み取る。
- バイアス電圧VBEや制御回路の余裕電圧を加算して、ドロップアウト電圧を概算する。
-
MOSFET LDOの場合
- 負荷電流Ioutを想定する。
- RDS(on)を確認し、Iout × RDS(on)で最低限必要な差を算出する。
- ゲートドライブ電圧による追加の余裕も考慮して最終的にドロップアウト電圧を求める。
低ノイズ設計・逆流防止のポイント

LDOはスイッチングレギュレータと比べると高周波ノイズが少ない利点があります。しかし、パス素子の選択や内部回路の構成によっては、バイポーラトランジスタのベース電流経路やリファレンス回路の雑音が問題となることもあります。設計時の考慮点は以下のとおりです。
- バイパスコンデンサ
リファレンスや誤差増幅器の電源端子近傍に小容量コンデンサを入れ、ノイズを除去する。 - レイアウトの工夫
入出力コンデンサを適切に配置し、GNDパターンを最適化することでスパイクやリップルを抑制する。 - 逆流防止(Reverse Current Protection)
バッテリーからレギュレータへ電流が逆流すると、誤作動や破損の原因になる。保護ダイオードやスイッチ素子などを追加して対策する。
LDOの種類と主要パラメーター
LDOは内部に用いる素子や設計思想によって多様な種類があります。一方で、選定の際には共通して評価すべきパラメーターも存在します。このセクションでは、LDOの代表的なバリエーションと、その性能を見極めるうえで欠かせない主要パラメーターについて整理します。
電圧範囲別(高電圧 / 低電圧対応)

LDOは低ドロップアウトが特長ですが、入力電圧範囲には幅があります。例えば、5V以下の動作を想定したバッテリー駆動向けの低電圧LDOもあれば、車載や産業機器向けに30Vや40Vを超える高入力電圧に対応するLDOもあります。高電圧対応のLDOは、パワートランジスタが高耐圧化され保護機能も強化されていることが多いです。一方で、1V付近を生成するなど超低電圧領域に特化したLDOは、MOSFETベースでゲートドライブを工夫し、極限までドロップアウトを下げる設計が施されています。
低ノイズ / 低静電流 / PSRR / ライン・ロードレギュレーション

低ノイズ、低静電流
- 低ノイズ型
アナログ回路や無線回路に電源を供給する際など、ノイズが信号品質に大きく影響する用途で使われます。リファレンス回路や誤差増幅器の雑音を低減し、パス素子のスイッチングノイズを極力抑えた設計になっています。 - 低静止電流(Iq)型
待機時の消費電流を最小限にすることで、バッテリー駆動時間を延ばすことを目的とします。小容量コンデンサや簡易な内部回路構成によって、静止電流を数µA以下に抑える製品もあります。
PSRR(Power Supply Ripple Rejection)
PSRRは、入力側のリップルやノイズがどの程度出力側に伝わるかを示す指標です。周波数特性として示されることが多く、特に数十kHz以上の高周波域でのPSRRが重視される場合があります。例えばオーディオ回路や高精度アナログ回路では、PSRRが高いLDOを選ぶことで電源ノイズの影響を低減でき、精度向上に寄与します。以下のように定義されます。
\(PSRR(f)=20log_{10} \left( \frac{\large{V_{ripple,in}(f)}}{\large{V_{ripple,out}(f)}} \right)\)
値が大きいほど入力リップルの抑制能力が高いことを意味します。ここでVripple,in(f)は入力側のリップル電圧、Vripple,out(f)は出力側に残存するリップル電圧です。
途中計算例(PSRR求め方のイメージ)
- 入力に既知振幅のリップル電圧(例:10mVピーク)を与える。
- 出力に現れるリップル幅を測定(例:1mVピーク)。
- それぞれを振幅又はRMSで比較し、次のように計算する。
\(PSRR(f)=20log_{10} \left(\frac{\large{10mV}}{\large{1mV}}\right)=20log_{10}(10)=20dB\)
ライン・ロードレギュレーション
- ラインレギュレーション
入力電圧が変化したときに出力電圧がどの程度変動するかを示します。一般的に以下のように表されます。(mV/Vや%/Vなどで示されることが多いです。)
\(Line \ regulation=\frac{\large{ΔV_{out}}}{\large{ΔV_{in}}}\)
- ロードレギュレーション
負荷電流の変化に対して出力電圧がどの程度変動するかを示します。以下のように表されます。(mV/mAや%/mAなどで示されることが多いです。)
\(Load \ regulation=\frac{\large{ΔV_{out}}}{\large{ΔI_{out}}}\)
いずれもLDOの電圧制御性能を数値化する指標であり、データシートではMax値やtyp値が示されます。動作温度範囲での変動も考慮し、実装する回路が必要要件を満たすか確認することが重要です。
効率・熱設計(消費電力 / 発熱 / パッケージ)

リニアレギュレータであるLDOの基本的な消費電力は、以下の式で概算できます。
\(P_{diss}=(V_{in}-V_{out})×I_{out}\)
これは入力電源から供給される電力と、出力で利用される電力の差分です。
この損失はほぼ熱として放出されるため、入力電圧と出力電圧の差が大きいときや大電流を扱うときは発熱が増大し、ヒートシンクや基板パターンでの放熱設計を考慮する必要があります。
LDOはスイッチングレギュレータと異なり高効率化が難しい側面がありますが、ドロップアウト電圧を極限まで下げることで入力-出力間の電圧差を抑え、損失を低減できます。また、パッケージによって熱抵抗が変わるため、PowerPADやフリップチップ実装など放熱特性に優れたパッケージを選択することも重要です。
負荷応答・トランジェント応答・起動特性
電源の負荷が瞬間的に増減する場合や、LDOが起動する際に出力電圧がどの程度安定しているかは設計段階で重視されます。

- 負荷応答
負荷電流が急変した際の出力電圧変動の大きさや復帰までの時間。誤差増幅器の速度や出力コンデンサの容量・内部抵抗などによって左右されます。 - トランジェント応答
電圧が一時的にオーバーシュートやアンダーシュートする現象。高速応答が求められる用途(高速デジタル回路など)では大きな問題になることがあります。 - 起動特性
LDOが電源投入時に出力電圧を立ち上げるまでの挙動。急激な立ち上がりで負荷に悪影響を与えないよう、ソフトスタート機能を持つ製品もあります。
近年は、制御ICと周辺回路を一体化したLDOモジュールも登場しており、基板実装の手間や外付け部品の選定工数を軽減する手法が注目されています。こうしたモジュール型は動作範囲や放熱設計が明確化されているため、開発スピード重視のアプリケーションに向いています。
LDOと他方式の比較・選び方
LDO以外にもさまざまな電圧レギュレーション手法がありますが、それぞれに長所と短所があります。ここでは、特に比較されることの多いスイッチングレギュレータ及び従来型リニアレギュレータと比較しながら、LDOの特徴を再確認し、用途別の選定ポイントを整理します。

スイッチングレギュレータ vs LDO(消費電力・効率比較)
スイッチングレギュレータは、パルス幅変調(PWM)やパルス周波数変調(PFM)などの手法でスイッチ素子を高速オン/オフし、インダクタやコンデンサを介して出力電圧を形成します。代表的な方式として降圧(Buck)、昇圧(Boost)、両対応(Buck-Boost)などがあります。トランジスタやダイオード(又は同期整流MOSFET)の損失が最小化されるタイミングで電流を流すため高効率を実現し、80〜90%を超えることも珍しくありません。
一方、スイッチングレギュレータはインダクタや大容量コンデンサなど外付け部品が必要になる場合が多く、実装スペースを取ったり回路設計が複雑になったりします。また、高速スイッチングに伴うノイズ(EMI)やリップルが発生しやすく、それらを抑えるためのシールドやレイアウト上の配慮が求められます。
LDOは入力電圧から出力電圧へ線形的に電力を制御するため、(Vin – Vout)×Ioutで示される損失が発生し、その分は発熱として捨てられます。効率という観点で比較すると、スイッチングレギュレータは負荷電流や設計にもよりますが80〜90%以上の効率が期待できるのに対し、LDOは以下のように近似されます。
\(η≈\frac{\large{V_{out}}}{\large{V_{in}}}×100\%\)
入力電圧と出力電圧の差が大きいほど効率が低下しますが、ドロップアウト電圧が極めて小さい場合には、(Vin – Vout)自体をわずかに抑えられるため、実用上ある程度の効率を確保できるケースもあります。また、LDOは高周波ノイズが出にくく、外付け部品も入出力コンデンサ程度で済むため実装がシンプルでリップルも小さいという利点があります。
まとめとしては、大きな電圧降下を伴う場合や高効率を最重視するならスイッチングレギュレータが向いており、電圧差が小さい環境やノイズを嫌うアナログ回路などではLDOが有効となります。
従来型リニアレギュレータ vs LDO(3端子レギュレータなどとの違い)
従来型リニアレギュレータは、入力電圧に対して2〜3V程度の余裕が必要となる設計が多く、パス素子が飽和領域からある程度離れた状態で制御を行うことが前提とされています。一方、LDOはパス素子の動作点を飽和近くまで追い込み、ドロップアウト電圧を数百mV以下に抑えることに成功しています。
- パス素子の選択と構成
従来型リニアレギュレータでは制御のためにベース-エミッタ電圧やコレクタ-エミッタ電圧にある程度のマージンを取るのが一般的でしたが、LDOではMOSFETを用いてゲートソース電圧が小さくても動作できるようにしたり、バイポーラトランジスタの場合でも飽和近くでの制御を許容する回路を組むなど、ドロップアウト電圧を下げる工夫をしています。 - フィードバック回路の最適化
従来型では比較的ゆるやかな制御特性でしたが、LDOは小さな電圧差でも安定して制御できるように、誤差増幅器のバイアス電圧や内部リファレンスを工夫している場合が多いです。 - 応用分野の違い
従来のリニアレギュレータは、ACアダプタなど高めの入力電圧を降圧して手軽に安定化する用途に多く使われていました。一方、LDOはバッテリー駆動や1~2Vの低電圧を用いるデジタルICなど、低電圧かつ省電力が要求される環境で強みを発揮します。
用途別に考えるLDOの選定ポイント
LDOを選定する主なポイントは以下です。
- 必要な入力電圧と出力電圧の差
バッテリーの終端電圧(最低電圧)が出力電圧と近い場合、ドロップアウト電圧が小さいLDOが必須となる。 - 許容できる発熱量
LDOは(Vin – Vout)×Ioutが熱となるため、放熱設計とパッケージの選択が重要。 - ノイズ感度
アナログ回路や高周波回路ではPSRRや低ノイズ特性が重要視される。 - 消費電流
待機時の消費電流を極力抑えたい用途では、低Iq型を優先する。 - 負荷変動と応答速度
急激な負荷変動がある回路ではトランジェント応答に優れたLDOを選ぶと良い。
LDOの設計・実装で押さえるべき要点
LDOを実際に回路へ組み込む際は、データシートに示されている推奨部品やレイアウトガイドラインを参考にしつつ、各種特性を満たすための設計が求められます。ここでは、代表的な設計フローや留意点を段階的に紹介します。

回路例・設計フロー(基本設計~部品選定)
LDOの設計フローは大まかに以下の手順となります。
- 入出力電圧範囲の確認
バッテリー駆動かACアダプタかなど、想定する電源の最小・最大電圧を把握する。 - 必要な出力電流・負荷特性の確認
最大負荷電流が何Aになるのか、瞬間的にどのくらい大きな負荷変動があるかを把握する。 - LDOの候補選定
データシートを参考にドロップアウト電圧やPSRR、消費電流、保護機能などが要件を満たす製品を探す。 - 周辺部品の選択
出力コンデンサの容量やESR範囲はLDOの安定動作に直結するため、メーカー推奨値を必ず確認する。 - 熱設計
パッケージや実装条件を踏まえ、(Vin – Vout)×Ioutが許容できる範囲か計算する。必要に応じて銅箔面積を広げるなどの放熱対策を検討する。
周辺部品選定(入力 / 出力コンデンサ、逆流防止ダイオードなど)
LDOの出力コンデンサは、位相補償や誤差増幅器の安定動作を確保するうえで重要です。データシートには推奨容量やESRの範囲が明示されることが多く、これを逸脱すると発振や過渡応答の悪化につながる可能性があります。
入力コンデンサは瞬間的な電流供給の補助や入力電源のリップル抑制のために搭載します。一般的には数µFのセラミックコンデンサが使われますが、大きな負荷変動が想定される場合はさらに大容量を追加することもあります。
逆流防止ダイオードは、バッテリーなどのバックアップ電源がある場合に検討されます。複数の電源が切り替わる設計では、LDOのパス素子を通じた逆流を防ぐためのダイオードを入れることが多いです。
レイアウト・配線の注意点(ノイズ対策・GNDパターン など)
LDOは基本的にノイズが少ないとはいえ、以下のレイアウト上の配慮が推奨されます。
- 最短経路の確保
入力コンデンサや出力コンデンサはLDOのピン近くに配置し、不要なパターンインダクタンスや寄生抵抗を低減する。 - GNDパターンの一括管理
パワーGNDと信号GNDを必要に応じて分離し、ノイズが測定系などへ混入しにくいように配慮する。 - 熱拡散の確保
放熱パッドがある場合は基板の内層や裏面にスルーホールを設け、放熱を促進する。
保護機能の活用と電源シーケンス(必要に応じて簡潔に)
LDOには過電流保護や過熱保護などの安全機能が備わっている場合が多いですが、これらを過信せず実環境でどの程度の過負荷状態が起き得るか評価したうえで選択することが重要です。
また、マルチ電圧のCPUやFPGAなど、複数の電源ラインを順番に立ち上げる必要がある場合には、LDOのイネーブル端子を使ったシーケンス制御を行うことがあります。ディレイ回路やマイコン制御と組み合わせ、必要な電源が適切に立ち上がるよう設計すると、システム動作の信頼性を高められます。
LDOの最新技術動向
近年のLDOでは、より厳しい省電力要件や実装スペース削減へのニーズが高まっており、新たに以下のような技術的アプローチが注目されています。これらの技術は「超小容量の出力コンデンサ対応」や「高速負荷応答性能の向上」を実現することで、従来のLDOでは困難だった課題を克服しつつあります。

極小容量コンデンサでも安定動作できる技術
- 技術概要
従来のLDOは安定動作のために、1µF程度の出力コンデンサを必要とする場合が多くありました。最近では、アナログ回路の寄生成分を徹底的に最適化し、誤差増幅器や配線の工夫によって、nFオーダーのコンデンサでも発振しないよう制御する技術が登場しています。 -
主なメリット
- 部品点数・実装スペースの削減:出力コンデンサの容量や個数を大幅に削減可能
- 省コスト化:コンデンサの小型化や数量削減によってコスト減が期待できる
- 信頼性向上:自動車・産業用などで多用されるコンデンサの搭載数を減らすことで、部品故障リスクや実装不具合リスクも低減
高速負荷応答を実現する技術
- 技術概要
負荷電流が急変した場合でも出力電圧の変動幅を最小限に抑えるために、LDO内部の帰還回路や誤差増幅回路を高速化する技術が開発されています。制御系と補償系を分割したり、多段の専用アンプを組み合わせたりすることで、不安定振動を起こさずに応答速度を極限まで高めるアプローチが代表的です。 -
主なメリット
- 電源品質の向上:デジタルICの急激な消費電流変化や高精度アナログ回路の瞬間的な負荷変動にも迅速に対応
- コンデンサ容量の最適化:大きな容量を用いなくても十分な応答性能を得られるため、設計の自由度が拡大
さらなる進化と今後の展開
- 新技術の組み合わせ
「極小容量コンデンサ対応」と「高速負荷応答技術」を組み合わせることで、例えばnF級コンデンサを用いつつ急激な負荷変動でも出力を安定化できるLDOが実現されつつあります。 -
広がる応用分野
IoT機器やウェアラブルデバイスなど、省電力と小型化を両立したい用途は今後も増えていくと考えられます。また、自動車分野や産業機器分野では実装スペースの削減と高信頼性化(温度特性や耐電圧などの安全規格への適合)が同時に求められており、こうした先端技術を搭載したLDOがいっそう注目されています。
半導体メーカー各社は、複数の電源ラインを集約したモジュール型LDOや、システム全体の省エネルギーを実現するソリューションを拡充しており、応用分野はますます広がっています。
まとめ
LDOは入力電圧と出力電圧の差を抑えたまま動作し、小型・低ノイズ・省エネルギーという観点で多くの機器に利用されています。モバイル機器や車載機器、産業用機器など、さまざまな分野で省電力化や熱対策を要する回路に適しています。
LDO基礎のポイントおさらい
- 定義:Low Dropout Regulatorは入力-出力間の電圧差が小さくても動作できるリニアレギュレータ
- 回路構成:パス素子と誤差増幅器、保護機能によって出力電圧を安定化する。ドロップアウト電圧が低い設計が特徴
- 主要パラメーター:ドロップアウト電圧、PSRR、ライン/ロードレギュレーション、発熱・効率、負荷応答などが選定時に重要
- 比較:スイッチングレギュレータと比べてノイズが少なく、従来型リニアレギュレータよりも低い差圧で動作可能
- 設計・実装:周辺部品の選定やレイアウトが動作安定に直結。熱設計や保護機能の考慮も必要
今後の動向
近年はIoT機器やウェアラブル端末など、バッテリー容量が限られる中で長時間駆動が求められる分野が増えています。こうした分野では、超低ドロップアウト・超低静電流仕様のLDOの需要が高まっており、メーカー各社が特性の向上に取り組んでいます。また、車載システム向けに高耐圧化したLDOも多く開発されており、産業や自動車分野でもLDOが活躍しています。
さらに、複雑な電源構成が必要なシステムでは、スイッチングレギュレータで大まかに降圧し、最終段でLDOを用いてノイズを低減する手法も一般的です。このようにLDOは電源設計において重要なポジションを占めており、今後も高性能化・超低ノイズ化などの進化が期待されます。
DC-DCコンバータ
基礎編
- 電源回路の代表的な7方式: 低雑音型から昇圧型まで!
- 昇圧型DC-DCコンバータのシャットダウン時の動作
- 昇圧電源の出力でのスイッチングノイズの低減 -はじめに-
- 昇圧型DC-DCコンバータの出力リップル電圧 -はじめに-
- 昇圧電源の負荷短絡によるトラブルと保護回路 -はじめに-
- 昇圧型DC-DCコンバータの最大出力電流 -はじめに-
- リニアレギュレータの基礎
- スイッチングレギュレータの基礎
- DC-DCの基礎 ーまとめー
- DC/DCコンバータとは?
設計編
評価編
-
損失の検討
- 同期整流降圧コンバータの制御IC消費電力損失
- 同期整流降圧コンバータのデッドタイム損失
- 同期整流降圧コンバータのゲートチャージ損失
- インダクタのDCRによる導通損失
- 電源ICの電力損失計算例
- 定義と発熱
- 同期整流降圧コンバータの損失
- 同期整流降圧コンバータの導通損失
- 同期整流降圧コンバータのスイッチング損失
- 損失の簡易的計算方法
- パッケージ選定時の熱計算例 1
- パッケージ選定時の熱計算例 2
- 損失要因
- スイッチング周波数を高めて小型化を検討するときの注意
- 高入力電圧アプリケーションを検討するときの注意
- 出力電流が大きいアプリケーションを検討するときの注意 その1
- 出力電流が大きいアプリケーションを検討するときの注意 その2
- 損失の検討 ーまとめー
- スイッチングレギュレータの特性と評価方法の概要
- 電源ICのデータシートの読み方:表紙、ブロック図、絶対最大定格と推奨動作条件
- スイッチングレギュレータの評価:出力電圧
応用編
- リニアレギュレータを使った電源設計のポイント
- LDOリニアレギュレータの並列接続とは
- リニアレギュレータの簡易的な安定性最適化方法
- 汎用電源ICで電源シーケンスを実現する回路
- リニアレギュレータを使った電源が起動しないトラブル事例1:手はんだによるICおよび周辺部品の破損
- フローティング動作のリニアレギュレータを使った電源設計のポイント
製品紹介
FAQ