エンジニアコラム
5人のエンジニアがミドルパワーデバイス新製品を語る 第3回 650V高耐圧で低オン抵抗と高速スイッチングを実現したスーパージャンクションMOSFET
2021.01.12
はじめまして!ロームの小野寺と申します。高耐圧MOSFETの新製品開発を担当しています。今回は、新たに開発した高耐圧スーパージャンクションMOSFETの話をさせてもらおうと思います。
最初に、高耐圧MOSFETについて少し。ロームでは、ドレインーソース間の耐圧が500V~900VくらいまでのMOSFETを高耐圧MOSFETに区分しています。高耐圧MOSFETは、主に家電やパソコンなど様々な電化製品の電源回路、冷蔵庫や洗濯機、エアコンなどのインバータ回路のスイッチング素子として使われており、近年の省電力化対応には必須と言える、スイッチング方式電力変換回路のキーアイテムです。
今回新規に開発したのは、650V耐圧のスーパージャンクションMOSFETのラインアップで、「R65xxKNX3シリーズ」と呼んでいます。パッケージは、パワーMOSFETの標準タイプであるTO-220ABを用意しました。TO-220ABパッケージは、素子チップが載っている金属パッド(放熱フィン)がパッケージ裏面に露出していることから放熱性に優れており、発熱が大きいサーバー電源などの大電力電源の用途に適しています。

図1.TO-220ABパッケージ
R65xxKNX3シリーズの特長は、650Vの高耐圧でありながら低オン抵抗かつ高速スイッチングを実現した点にあります。これは、スーパージャンクション構造の採用によるものです。MOSFETのようなディスクリートは素子単体なので、プロセスや構造が直接的に性能の鍵になります。素子のプロセスと構造の話になりますが、図を使ってポイントを説明します。
図2の左側は従来品が採用しているプレーナー構造で、右側が今回採用したスーパージャンクション構造です。

図2.プレーナー構造(左)とスーパージャンクション構造(右)
続いて、それぞれに電圧を印加した際の空乏層の広がりの違いを図3に示します。空乏層は耐圧に大きく関係します。

図3.プレーナー構造(左)とスーパージャンクション構造(右)の空乏層の広がりの違い
プレーナー構造は、電圧の印加に対して空乏層が深さ方向に広がるため、オン抵抗を下げるために不純物濃度を上げると空乏層の幅が小さくなり、耐圧を維持することができません。それに対してスーパージャンクション構造は、ドリフト層であるN層にP層が柱状に並んでいるので、電圧を印加すると空乏層が横方向に広がって、柱状のP層(Pカラムといいます)の深さ分の空乏層を形成できます。そのため、オン抵抗を下げるためにドリフト層の不純物濃度を上げても耐圧を維持することができ、高耐圧と低オン抵抗を両立できます。
また、スーパージャンクション構造は、プレーナー構造と比較して低容量なため、スイッチング損失も低減できます。
では、実際のラインアップを紹介します。様々なアプリケーションで使用できるよう、オン抵抗が98mΩ~280mΩ(Typ.)の5機種を用意しています。(表内の各品番をクリックすると、該当製品詳細ページへリンクします。)

最後に、今後の予定について。新シリーズをリリースしたばかりですが、すでに次世代品の開発に入っています。次世代品はさらに低オン抵抗化を図り、チップ面積あたりのオン抵抗で4割低減を目標にしています。地球環境を守るために省エネ・高効率が求められており、その一端として最初にお話ししたようにスイッチング素子の高性能化は非常に重要だと考えています。
それでは、次回もよろしくお願いします。
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