2022.04.26
こんにちは! ロームの稲垣です。
第21回は、電磁両立性(EMC)の計算法・シミュレーションの6回目、放射イミュニティ(RI: Radiated Immunity)の計算試行について説明します。車載用の電磁両立性(EMC)特性に関する、「ISO 11452-2規格 ALSE法(Absorber-lined shielded enclosure)」で、アンテナ照射法とも呼ばれます。
車載蓄電池、疑似電源回路網、ワイヤ・ハーネス、DUT(試験対象)等が基準グランド面の上に配置され、1メートルの距離にあるアンテナから電磁雑音(電界)を印加して、DUT(試験対象)が誤動作するか否かを判定します。CISPR25規格ALSE法がワイヤ・ハーネス等からの放射エミッションを観測するのに対して、ISO 11452-2規格ALSE法はワイヤ・ハーネス等への放射イミュニティを観測するので、現象的には逆方向となります。
計算予測に関してはCISPR25規格ALSE法が計算できる環境であれば、若干の設定変更等は必要ですが、CADデータ等はほぼそのまま使用できるかと思います。計算対象は上記に加えて、アンテナ信号源(電界)、EMC対策部品(ここでは容量素子C)、DUT(LSIモデル・受動素子化)、規格適合判定器等となります。
今回は、電磁界解析と回路解析を組み合わせて使います。計算の大筋としては、アンテナの電界強度からワイヤ・ハーネスに接続されているプリント基板(PCB)の誘起電圧を、電磁界解析で計算します。その誘起電圧からDUT(LSI端子)に到達する電圧を基に、誤動作の有無を回路解析で判定します。端的に言うと、放射系(空中を信号伝搬する部分)を電磁界解析に、伝導系(配線上を信号伝達する部分)を回路解析に分担させます。
電磁界解析(MoM法)のCADデータと計算結果例.
車載蓄電池、疑似電源回路網、
ワイヤ・ハーネス、DUTの記述例.
それでは順を追って説明します。計算試行では2段階処理をしていて、1段目のIB(誤動作閾値)モデル抽出(Extraction)と、2段目の計算予測(Prediction)の各々を(シェル・)スクリプトで自動化しています。1段階目のIB(誤動作閾値)モデル抽出(Extraction)では、下記の計算手順となります。
■1段階目:IB(誤動作閾値)モデル抽出(Extraction)
IB(誤動作閾値)モデルの計算例.
2段階目の計算予測(Prediction)では、下記の計算手順となります。
■2段階目:IB(誤動作閾値)モデル抽出(Extraction)
左:IB(誤動作閾値)モデル作成回路での計算予測例.
(測定値と計算値が一致,黒:測定値,赤:計算値,青緑:限度値)
右:EMC対策回路(容量素子C接続時)の計算予測例.
(黒:測定値,赤:計算値,青緑:限度値)
以上のように一般的な電磁界解析ツールと回路解析ツールであっても、計算結果をテキスト・ファイル(ASCII)で自動保存し(シェル・)スクリプトで受け渡しする事で、比較的容易に設計自動化・検証自動化が実現できます。
御一読頂きまして、どうもありがとうございます。
<書籍の参照ページ>
「LSIのEMC設計」,科学情報出版株式会社,2018年2月初版発行,ISBN978-4-904774-68-7.
これからEMCに取り組む設計者向けに、EMCのイメージを掴んでもらうためのハンドブックです。
半導体デバイス、製品仕様、回路・基板の3つの観点とEMCの関係について、感覚的に理解を進めます。
これからEMCに取り組む設計者向けに、EMCのイメージを掴んでもらうためのハンドブックです。
半導体デバイス、製品仕様、回路・基板の3つの観点とEMCの関係について、感覚的に理解を進めます。