2021.08.31
こんにちは! ロームの稲垣です。
前回第13回では、電磁両立性(EMC)の概要全体を説明しようと思いましたが、紙面が足りなくなってしまいました。今回第14回では、引き続き電磁両立性(EMC)概要についてお話したいと思います。
電磁干渉(EMI)と電磁感受性(EMS)については、もう理解頂けたと思います。今回は、これらの電磁雑音の伝達経路について説明します。既に初級編で説明した様に、電磁雑音はプリント基板(PCB)やプリント基板(PCB)間等の配線上を伝わる伝導(Conducted)と、試験対象(DUT)から直接、もしくはプリント基板(PCB)の配線等をアンテナとして空気中に伝播する放射(Radiated)に分類できます。一般的には30MHz(メガヘルツ)までは伝導、30MHz以上は放射の扱いになります。明確に30MHzで区切られている訳ではないので、一つの目安として頂ければ良いです。従って電磁両立性(EMC)の物理現象は次の4つに大きく分類できます。
伝導エミッション (CE:Conducted Emission)
放射エミッション (RE:Radiated Emission)
伝導イミュニティ (CI:Conducted Immunity)
放射イミュニティ (RI:Radiated Immunity)
電磁干渉(EMI)と電磁感受性(EMS)は両立しなければいけないと説明しましたが、物理現象としては上記4つが起こらない様にしなければいけないことになります。これはかなり大変なことなんです。実は電磁両立性(EMC)の国際規格も、この体系で分類されています。御客様から提示される購入仕様書にも、電磁両立性(EMC)は上記の分類で規定され、更に細かな国際規格が指定されています。
また製品毎に電磁両立性(EMC)の国際規格があり、それぞれに代表的な規格があります。簡単に纏めると、この様になります。
代表的な電磁両立性(EMC)の国際規格
製品体系 | 電磁干渉(EMI) | 電磁両立性(EMS) |
---|---|---|
半導体素子 | IEC 61967-4規格 (伝導エミッション):1Ω/150Ω法 150kHz~1GHz |
IEC 62312-4規格 (伝導イミュニティ):DPI法 150kHz~1GHz |
民生系製品 | CISPR32(旧22)規格 (伝導エミッション):電圧法 150kHz~30MHz (放射エミッション):3m法/10m法 30MHz~1GHz |
IEC 61000-4-3規格 (放射イミュニティ): 放射無線周波数電磁界イミュニティ 80MHz~6GHz |
車載系製品 | CISPR25規格 (伝導エミッション):電圧法 150kHz~108MHz (放射エミッション):ALSE法 150kHz~2.5GHz |
ISO 11452-4規格 (伝導イミュニティ): HE法(BCI法/TWC法) 100KHz~400MHz /400MHz~3GHz |
放射や伝導の周波数条件を見ると、「あれ?」と思われるかもしれません。先ほど「一つの目安」としながらも、「一般的には30MHz(メガヘルツ)までは伝導、30MHz以上は放射の扱いになります」と説明しました。しかし、実際の国際規格では伝導でも1GHzまで規定しているものも多くあり、放射でも150KHzから規定しているものもあります。伝導の試験で30MHz以上まで規定していると言うのは、純粋に伝導の成分だけでなく、放射も含めて(伝導の測定回路で)高周波までを測定範囲としている意味合いを含んでいると理解してください。また御客様によっては独自規格として、上限周波数をさらに高周波まで伸ばして規格化している事も少なくありません。
これらの国際規格は、数年毎に改訂されています。理由としては、法律、規制や規則等と同じで重大インシデントとなる電磁両立性(EMC)不具合が発生すると、それらを未然に防ぐ意味から周波数範囲の改訂や測定限度値の変更が、国際電気標準会議(IEC)や国際標準化機構(ISO)等の各委員会で検討され、国際規格の改訂・発行が行われていきます。
御一読頂きまして、どうもありがとうございます。
これからEMCに取り組む設計者向けに、EMCのイメージを掴んでもらうためのハンドブックです。
半導体デバイス、製品仕様、回路・基板の3つの観点とEMCの関係について、感覚的に理解を進めます。
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