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2014.09.16 DC/DC
スイッチングレギュレータの基本として、電圧制御方法について説明します。スイッチングレギュレータにかかわらず電圧レギュレータの機能は、安定化された出力電圧を生成することです。そのために、出力電圧を制御回路にフィードバックしループ制御を行うことは「フィードバック制御方式」の項で説明しました。ここで、説明するのは、入力電圧を例えば5Vに調整するためにどのような制御を行うかという、電圧制御の方式についてです。
スイッチングレギュレータは、名称の通り、入力電圧をスイッチする、つまりオン/オフすることで所望の出力電圧に変換します。この仕組みについては、「動作原理」の項で説明した通りで、簡単に言えば、入力の電圧を設定した出力電圧に見合うように切り刻んで平均化します。この入力電圧の切り刻み方には、主に2つの方法があります。
・PWM制御(パルス幅変調)
PWMはもっとも一般的な電圧制御方法です。一定の周期のもとに、出力が必要とする電力に該当する分を、スイッチをオンにして入力から取り出します。したがって、必要な出力電力によってオンとオフの比率、デューティサイクルが変化します。
周波数が一定なので、発生するスイッチングノイズは予測可能で、フィルタ処理がしやすいというメリットがあります。デメリットとしては、同じく周波数が一定なことから、重負荷時も軽負荷時もスイッチする回数が同じなことから自己消費電流は変わらないので、軽負荷時にはそのスイッチング損失が支配的になり効率が低下します。
●周波数が一定でデューティサイクルにて出力電圧を調整
・PFM制御(パルス周波数変調)
PFMは、固定オン時間タイプと固定オフ時間タイプがあります。固定オン時間タイプを例にとると(下図参照)、オン時間は一定でオフ時間が変わります。 別の言い方をすれば、次にオンするまでの時間が変わります。負荷が大きくなると、時間内でのオンする回数を増やして負荷に追従します。つまり、重負荷時には周波数が高くなり、軽負荷時は周波数が低くなります。
メリットとしては、軽負荷時は電力の追加はそれ程いらないので、スイッチング周波数が低くなりスイッチする回数が減るのでスイッチング損失が減少し、軽負荷時でも高効率を維持することができます。デメリットは、周波数が変わるのでスイッチングに関連するノイズが不定になり、フィルタが難しくなります。つまりノイズを取りにくくなります。また、周波数が20kHzを切ると可聴帯に入り、音鳴りの可能性が出てきたり、オーディオ機器ではS/Nに影響を与える可能性があります。そういった意味では、PWMの方が扱いやすい面があるといえます。
●ON(またはOFF)時間を一定にして、OFF(またはON)時間を調整
どちらを利用するかは、各特性を理解した上でのトレードオフが必要になってきますが、双方の良いところを利用できるように、定常動作時にはPWM動作で、軽負荷時にはPFMに切り替え効率を維持するといった方式のICもあります。
●PWMとPFMの効率特性のイメージ
・PWM(パルス幅変調)は、周波数は一定でオン/オフの時間比(デューティサイクル)により制御する。
・PFM(パルス周波数変調)は、パルスのオン(またはオフ時間)を一定にしてオフ時間(またはオン時間)を変化させ制御する。
・メリット/デメリットを理解して使い分ける。
・両方の制御を切り替えるもの、さらに細かい制御モードを組み入れたICが増えている。