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ブラシ付きモータドライバの消費電力の計算方法 その1

今回は、モータドライバの消費電力について考えてみたいと思います。

モータドライバの消費電力計算について、下記でよいかという質問を受けたことがあります。

 (ICの回路電流+モータに流れる電流)×電源電圧

一見それらしいですが、正しくはありません。「ICの回路電流×電源電圧」は正しいですが、「モータに流れる電流×電源電圧」はモータの消費電力も含んでしまうので、正しくはモータドライバの出力消費電力を求めて、ICの回路消費電力と合算することになります。

出力の消費電力は「損失電圧×出力電流」で計算します。モータドライバの出力段となるHブリッジでの算出は後述しますが、理解のためのシンプルな例として、リニアレギュレータICの消費電力計算式を示します。

 リニアレギュレータICの消費電力=自己消費電力(Vin×Iin)+入出力電圧差(Vin-Vout)×出力電流(IO)

この式でIinとしたのは、データシートではIccやIqなどと記述されている電流で、Vin端子からIC内部の出力電圧安定化制御回路に流れ消費される電流です。続く項、「入出力電圧差×出力電流」は出力の損失(消費)電力になります。

例えば、オペアンプICで出力電流がミリアンペアに至らないような場合は、電源電圧×電源電流で計算してしまってもその誤差に大きなインパクトはありませんが、電源ICやモータドライバICのような比較的大きな出力電流を供給するICの場合は、「電源電圧×出力電流」で計算してしまうと大きな誤差が生じます。

少し回り道をしましたが、モータドライバICの消費電力計算も同じ考え方になります。

ブラシ付きモータドライバの消費電力の計算方法

それでは、ブラシ付きモータドライバICを例にして、消費電力の計算式の説明をして行きます。ブラシ付きモータの代表的な駆動方法として定電圧駆動とPWM駆動がありますので、最初は定電圧駆動について説明します。

①定電圧駆動時の消費電力計算

定電圧駆動の場合のモータドライバICの消費電力Pcは、基本的に以下の式で求めることができます。

 Pc=小信号部回路電流×電源電圧+モータに流れる電流×(ハイサイド出力間電圧+ローサイド出力間電圧)

下図は、電力消費がどの部分でどう生じるかをイメージするための模式図です。

「小信号部」と示してある部分はモータドライバICの制御回路で、この回路電流をIcc、電源電圧をVcc、モータに流れる電流をIOとします。また、Q1~4のMOSFETが出力段のHブリッジ回路です。

小信号部回路の消費電力は、単純にIcc×Vccで求められます。

HブリッジはハイサイドQ1とローサイドQ4がオンしており、IOはVccからQ1を通じてモータに流れQ4を介してGNDに流れます。このときのHブリッジの消費(損失)電力を求めます。MOSFETのオン状態は等価的に抵抗器として考えることでき、その抵抗値はMOSFETのオン抵抗Ronとなります。ハイサイドQ1のオン抵抗をRonH、ローサイドQ4のオン抵抗をRonLとすると、各出力間電圧は以下の式で表すことができます。

 ハイサイド出力間電圧VH=IO×RonH
 ローサイド出力間電圧VL=IO×RonL

これらから消費電力Pcは、以下の式で計算できます。

 Pc=Icc×Vcc+Io×(VH+VL)=Icc×Vcc+IO2×(RonH+RonL)

実際のVH、VLを測る方法が実践的ですが、MOSFETのRonはデータシートに記載されていますので、最大値を使って計算すればワーストケースの見積もりが可能になります。

続く