DC-DCコンバータ|基礎編
昇圧型DC-DCコンバータの出力リップル電圧 降圧型DC-DCコンバータと昇圧型DC-DCコンバータの出力リップルの違い
2023.05.30
この記事のポイント
・降圧型DC-DCコンバータでは、出力リップル電圧はインダクタリップル電流の平滑で発生し、インダクタリップル電流は負荷電流に依存しないので出力リップル電圧は一定値となる。
・昇圧型DC-DCコンバータでは出力コンデンサでパルス状電流を平滑しているために平滑時の充放電電荷量が大きく、大容量の出力コンデンサが必要となる。
・積層セラミックコンデンサはDCバイアス特性により高電圧印加で実効容量が大幅に減少するので、昇圧型DC-DCコンバータの出力での使用には実効容量の減少に注意が必要である。
1つ目の「降圧型DC-DCコンバータと昇圧型DC-DCコンバータの出力リップルの違い」についてです。
- 降圧型DC-DCコンバータと昇圧型DC-DCコンバータの出力リップルの違い
- 動作条件による昇圧型DC-DCコンバータの出力リップルの変化
降圧型と昇圧型でのDC-DCコンバータの出力リップルの違いを「降圧型DC-DCコンバータの出力リップル電圧」、「昇圧型DC-DCコンバータの出力リップル電圧」で説明します。
降圧型DC-DCコンバータの出力リップル電圧
昇圧型DC-DCコンバータと降圧型DC-DCコンバータの出力リップル電圧の違いを知るために、最初に降圧電源の出力リップル電圧がどうなるかを解説します。
降圧型DC-DCコンバータでは出力にはリップル電流により変動するインダクタ電流がそのまま出力され、出力コンデンサが変動する電流を平滑しています。出力される電流は、直流電流+インダクタリップル電流、となっており、出力コンデンサが平滑するのは交流成分であるインダクタリップル電流だけとなります。出力コンデンサで発生するリップル電圧ΔVは平滑動作により出力コンデンサへ充放電される電荷量Qクーロンによる、ΔV=Q/Cの電圧変動が基本となります。より正確には充放電電流値により、コンデンサのESR×充放電電流により発生する電圧と、充放電電流の電流変化とコンデンサのESL成分による微分電圧が加算された波形となりますが、今回はコンデンサへの充放電電荷量Qクーロンによる電圧だけで説明します。

インダクタに流れる電流は直流成分+リップル電流(P-P値)となります。リップル電流はハイサイドスイッチのオン時間に電流が増加し、ローサイドスイッチのオン時間に減少し、増減する電流の平均値が直流の出力電流となります。出力コンデンサへの充電は平均値を超えたときに、放電は平均値より低下したときに行われるので、ハイサイドオン時間の中央から充電が始まり、ローサイドオン時間の中央で終了し、この時間から放電が始まり、ハイサイドオン時間の中央で終了します。充放電の電流は0から始まり直線的に増減し、直線的に増減する三角形となります。この充放電電流をコンデンサで積分した電圧は図のように丸みを帯びた形状となり、出力コンデンサに発生するリップル電圧となります。
発生するリップル電圧の大きさはV=Q/Cより、電荷量と容量に依存し、リップル電流の大きさに比例し、出力コンデンサの容量に反比例します。リップル電流の大きさは入出力の電圧、スイッチング周波数、インダクタンス値により算出されますが、最大出力電流値の30%程度の大きさになるように設計されます。降圧型DC-DCコンバータのインダクタリップル電流値は出力電流値が増減しても変わらないので出力コンデンサで発生するリップル電圧も出力電流値に依存せず一定の値となります。ただし、出力電流がリップル電流の半値より小さくなったときなどの軽負荷時には、ダイオード整流の場合や軽負荷時の効率を改善するための軽負荷モードを持っている製品では、ON時間制御や間欠スイッチング動作などにより充放電電荷量が変化するので、リップル電圧も変化する場合があります。
昇圧型DC-DCコンバータの出力リップル電圧
昇圧型DC-DCコンバータではローサイドスイッチのオンでインダクタ電流の増加によるエネルギーの蓄積と、ハイサイドスイッチのオンでエネルギー解放によるインダクタ電流の減少を繰り返して動作しています。出力コンデンサへ電流が供給されるのはハイサイドスイッチがオンしている間だけなので供給電流は間欠的なパルス状の充電となります。

図の例では効率100%の理想電源とすると2Vから10V1Aの昇圧を行う場合、入力電流は5A必要となります。5倍に昇圧しているのでローサイドスイッチのオン時間が80%、ハイサイドスイッチのオン時間が20%となります。インダクタには連続して平均5Aの電流が流れます。ハイサイドスイッチがオンしている20%の時間は平均5Aの電流供給と1Aの負荷電流なので(5A-1A)=4Aの充電電流により出力コンデンサの電圧は上昇し、ローサイドスイッチがONしてインダクタにエネルギーを蓄積している間は電流供給がないので、出力コンデンサからの1Aの放電により電圧低下が発生します。出力コンデンサへの充電と放電により出力電圧にはリップル電圧が発生します。

負荷電流が一定のときQ=I×Tより充放電の電荷量Qは同じになり、リップル電圧はΔV=Q / CO となりますので、出力コンデンサCOの容量が大きいほどリップル電圧は小さくなります。降圧型DC-DCコンバータでは、出力リップル電圧はインダクタリップル電流による電流変動分を平滑しているだけでしたが、昇圧型DC-DCコンバータでは出力しているパルス状の供給電流を平滑する必要があるので平滑する電荷量も大きくなり、同じ程度のリップル電圧にするには、はるかに大容量の出力コンデンサが必要となります。
出力コンデンサに大容量の積層セラミックコンデンサを使用している場合には注意が必要です。積層セラミックコンデンサにはDCバイアス特性があり、高電圧の印加により実効容量が減少するという特性があります。降圧型コンバータでは出力電圧が低いことが多いので容量減少は問題とならないことが多いです。しかし、昇圧コンバータでは出力電圧が高いことが多く、高電圧の印加により実効容量が表記容量の数分の1に大きく減少している場合があります。実効容量の大幅な減少により設計値の数倍のリップル電圧が発生するだけではなく、出力容量の不足により過渡応答特性や負帰還制御の安定性にも問題が発生することがあるので実効容量の確認が必須となります。
DC-DCコンバータ
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