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エンジニアコラム

回路設計とEMC設計の塩梅

第5回 製品仕様書(2)
製品仕様書の読み方

保証値なのか参考値なのかを意識する

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こんにちは! ロームの稲垣です。

第5回は製品仕様書の読み方です。前回で最も重要と説明した「電気的特性」にフォーカスしてみます。通常規格値には、最小値、標準値、最大値のいずれか、もしくは全てが示されています。これらの意味するところを正しく理解することは重要で、理解を誤ると設計に問題が起こる場合があります。それでは、具体的な例を示しながら説明していきます。

最初に重要なポイントとして、最小値(min.)と最大値(max.)は保証値ですが、標準値(typ.)は保証値ではないことを理解願います。標準値(typ.)は多くの場合、おおよそ分布の中心の代表的な値で参考値になります。

例1:

項目 最小値(min.) 標準値(typ.) 最大値(max.) 単位 条件
基準電圧 1.225 1.250 1.275 V

1つ目は基準電圧の例で、最小値と最大値、そして標準値が示されています。設計の際には、基準電圧の中央値は1.250Vで、最小1.225Vから最大1.275Vの個体が存在する、つまり±2%の許容差があると読み取ります。

例2:

項目 最小値(min.) 標準値(typ.) 最大値(max.) 単位 条件
出力電圧Low 0.1 0.5 V

2つ目は出力電圧のLowレベルの例で、最大値と標準値が提示され、最小値は規定されない例です。ややこしい表現になりますが、Lowレベルが高くなってしまうとLowレベルとして機能しなくなるので、Lowレベルとしての最大電圧が保証されています。最小値が規定されないのは、グラウンド電圧以下にはならないためです。設計の際は、出力電圧Lowの中央値はおおよそ0.1Vで、最大で0.5Vになるものが含まれると理解します。感覚的には、出力電圧のLowレベルは最大でも0.5V以下が確保されているといった取り方になります。

例3:

項目 最小値(min.) 標準値(typ.) 最大値(max.) 単位 条件
出力電流 1 1.2 A

これは例2の逆で、最小値と標準値だけが規定される例です。意味合いとしては、出力電流は最小1A取れることが保証されており、おおよそは1.2Aほど取れることになります。しかしながら、設計で1A以上の出力電流が必要な場合に、この仕様のものは使用できません。もし、1.2A必要なら、最小値が1.2A以上のものを選択します。

例4:

項目 最小値(min.) 標準値(typ.) 最大値(max.) 単位 条件
同相入力電圧 0 3 V Vs=0/5V

この例は、最小値と最大値の規定はありますが、標準値が示されない例です。このような規定は多くの場合、入力電圧や電源電圧などの使用範囲を示す項目になります。この例では、電源電圧が5Vでも同相入力は0~3Vの範囲で、これを逸脱してはいけないことを意味しています。

例5:

項目 最小値(min.) 標準値(typ.) 最大値(max.) 単位 条件
2 % 設計値

最後は、標準値だけが示されている例です。標準値は保証値ではないので、この場合この項目は保証されないということになります。条件に記載されている「設計値」というのは、ICが良品であれば歪はおおよそ2%になるだろうという設計上の理論値、もしくは量産移行時の特性分布評価結果を基にした値であることがほとんどです。設計値の項目に関しては、内々に最小・最大に適切な値を設定し出荷検査を実施している場合もあります。一般にICの出荷検査装置で測定が困難な項目や、設計および統計的管理によって検証されている項目に適用する場合が多いです。

ここまで、一般的な電気的特性項目の話をしてきましたが、電磁両立性(EMC)の場合はどうでしょう?

実は、規格値項目として保証する事はほとんどありません。製品仕様書に電磁両立性(EMC)特性が記載されている場合もありますが、基本的に参考値で保証の対象外です。

また、電磁両立性(EMC)では、測定値はN=1である事(無作為抽出した1個のサンプルの測定値)、そして温度特性は測定しない事が大半です。理由としては、1回の測定に長時間を要する事、測定セットアップ状態で周囲温度を変化させることが困難な事等があります。これらは既知であり、半導体集積回路メーカーにほぼ共通して言える事柄です。

御一読頂きまして、どうもありがとうございます。

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