DC-DCコンバータ|応用編
フローティング動作のリニアレギュレータを使った電源設計のポイント リニアレギュレータの効率と熱設計
2023.02.21
電源において効率は非常に重要な検討事項です。リニアレギュレータの効率の求め方について解説します。
効率の求め方
電源の効率は、入力電力に対する出力電力の比率(%)で表します。これは、リニアレギュレータも同様です。BA1117の効率は、以下の式で求めることができます。なお、この計算式はBA1117のようにグラウンド端子を持たないフローティング動作のものの算式で、グラウンド端子を持つタイプの場合は、(IOUT+IADJ)の項がIIN(入力電流)になります。グラウンド端子を持つタイプに関しては別途記事を用意する予定です。
\(\eta = \displaystyle \frac{P_{\text{OUT}}}{P_{\text{IN}}} = \displaystyle \frac{V_{\text{OUT}} \times I_{\text{OUT}}}{V_{\text{IN}} \times \left( I_{\text{OUT}} + I_{\text{ADJ}} \right)} \times 100 \, [%]\)
VIN:入力電圧[V]
VOUT:出力電圧[V]
IOUT:出力電流[A]
IADJ:ADJピン電流[A]
ただし、IADJ ≪ IOUT場合は次式で計算できます。
\(\eta = \displaystyle \frac{V_{\text{OUT}}}{V_{\text{IN}}} \times 100 \, [%]\)
式から、入出力間の電圧差が小さいほど効率が良くなることがわかります。ただし、入出力間の電圧差の最小値は、ドロップアウト電圧として規定されているので、それ以上を確保する必要があることを忘れないでください。
リニアレギュレータの熱設計:ジャンクション温度の見積もり
前章の、効率の求め方で説明したように、リニアレギュレータの効率は入出力電圧差の影響を大きく受けます。単純には、効率が低い=損失が大きい=発熱が大きいので、熱設計は重要です。
電源回路の安全性と信頼性を確保するためには、リニアレギュレータICのジャンクション温度TJが、規定されている絶対最大定格TJ(MAX)を超えないように熱設計をする必要があります。そのためには、ジャンクション温度の見積もりが必要で、見積もりには次の2つの方法があります。
熱特性パラメータΨJTを用いたジャンクション温度TJの見積もり
リニアレギュレータICの表面温度測定が可能な場合には、熱特性パラメータΨJTを用いてジャンクション温度TJを見積もることができます。熱電対をパッケージ上面中心にしっかり固定できれば、パッケージ上面中心温度TTを精度よく測定できるため、ΨJTを用いて精度の良いジャンクション温度を算出することができます。以下に算出式を示します。
\(T_j = T_T + \Psi_{JT} \times P \, [℃]\)
TT:パッケージ上面中心温度[℃]
ΨJT:ジャンクションからパッケージ上面中心までの熱特性パラメータ[℃/W]
P:ICの消費電力[W]
BA1117の場合、ICの消費電力Pは次式により計算できます。なお、この計算式はBA1117のようにグラウンド端子を持たないフローティング動作のものの算式で、グラウンド端子を持つタイプの場合は、IADJの項がIIN-IOUTになります。グラウンド端子を持つタイプに関しては別途記事を用意する予定です。
\(P = \left(V_{\mathrm{IN}} – V_{\mathrm{OUT}}\right) \times I_{\mathrm{OUT}} + \left(V_{\mathrm{IN}} \times I_{\mathrm{ADJ}}\right) \, \left[W\right]\)
VIN:入力電圧[V]
VOUT:出力電圧[V]
IOUT:出力電流[A]
IADJ:ADJピン電流[A]
ただし、IADJ ≪ IOUT場合は次式で計算できます。
\(P = \left(V_{\mathrm{IN}} – V_{\mathrm{OUT}}\right) \times I_{\mathrm{OUT}} \, \left[W\right]\)
また、定常的に流せる最大出力電流は次式で算出することができます。
\(I_{\mathrm{OUT(MAX)}} = \displaystyle \frac{T_{\mathrm{J(MAX)}} – T_\mathrm{T}}{\left(V_{\mathrm{IN}} – V_{\mathrm{OUT}}\right) \times \Psi_{JT}} \, \left[\mathrm{A}\right]\)
TJ(MAX):ジャンクション温度の絶対最大定格[℃]
TT:パッケージ上面中心温度[℃]
ΨJT:ジャンクションからパッケージ上面中心までの熱特性パラメータ[℃/W]
VIN:入力電圧[V]
VOUT:出力電圧[V]
熱抵抗θJAを用いたジャンクション温度TJの見積もり
熱抵抗ΨJAを用いて、簡易的にジャンクション温度TJを算出することもできます。
\(T_j = T_A + \theta_{JA} \times P{[℃]}\)
TA:周囲環境温度[℃]
ΨJA:ジャンクションから周囲環境温度までの熱抵抗[℃/W]
P:ICの消費電力[W]
ICの消費電力Pは、BA1117の場合、ΨJTを用いた見積もりで示した式と同じ式により計算できます。
また、定常的に流せる最大出力電流は次式で算出することができます。
\(I_{\mathrm{OUT(MAX)}} = \displaystyle \frac{T_{\mathrm{J(MAX)}} – T_\mathrm{A}}{\left(V_{\mathrm{IN}} – V_{\mathrm{OUT}}\right) \times \theta_{\mathrm{JA}}} \, \left[\mathrm{A}\right]\)
TJ(MAX):ジャンクション温度の絶対最大定格[℃]
TA:周囲環境温度[℃]
ΨJA:ジャンクションから周囲環境温度までの熱抵抗[℃/W]
VIN:入力電圧[V]
VOUT:出力電圧[V]
熱特性パラメータΨJTや熱抵抗ΨJAは、ICのデータシートに記載があるか、ICのメーカーで確認可能です。次に示す熱特性パラメータΨJT及び熱抵抗ΨJAは、特定のPCBで測定した値の例です。PCBの特性、銅箔のレイアウト、部品配置、筐体形状、周囲環境などの影響で放熱性能が変わるため、熱特性パラメータ、熱抵抗も変化します。実機基板とは値が異なることを考慮しておく必要があります。
TO252-3パッケージの熱特性パラメータ及び熱抵抗の例
| PCBの種類 | ΨJT[℃/W] | ΨJA[℃/W] |
|---|---|---|
| 1層(1s) | 13 | 132.2 |
| 2層(2s) | 3 | 30.2 |
| 4層(2s2p) | 2 | 23.3 |
また、測定に使用したPCBの仕様を以下に示します。1層(1s)、2層(2s)、4層(2s2p)の順になっています。
なお、熱設計の詳細は、TechWebの「電子機器における半導体部品の熱設計」を参照願います。



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