DC-DCコンバータ|応用編
リニアレギュレータを使った電源設計のポイント リニアレギュレータICの入出力コンデンサ設計とリップル対策
2023.10.05
リニアレギュレータICの入出力電圧差と過渡応答及びリップル除去比の関係
リニアレギュレータICが動作できる入力電圧の最小値は、使用する負荷電流での入出力電圧差をデータシートの「入出力電圧差 vs 出力電流」グラフより読み取り、出力電圧に加算した電圧となります。下図は、説明に使っているBDxxIC0Wシリーズのデータシートからの一例として抜粋したものです。例えば負荷電流(出力電流)IOが0.6Aの場合、入出力電圧差Vdropは約0.25Vで、所望の出力電圧が3.3Vの場合の入力電圧の最小値は3.3V+0.25V=3.55Vとなります。基本的にグラフの特性値は代表値です。
ドロップアウト電圧と出力電流(負荷電流)の関係の例
前出の例のような入出力電圧差が最小限の条件では、いくつか注意する点があります。この場合、DCは動作し既定の電圧を出力することはできますが、制御能力は低下しています。
入出力電圧差が小さいと入力から出力へ短時間に十分な電流を供給することができず、負荷応答特性が低下します。また応答性が遅くなると、PSRR(リップル除去比)特性も低下してしまいます。
効率重視の観点から入出力電圧差を最小限にしてしまうと、リニアレギュレータは使用条件によって十分な特性を発揮することができなくなります。必要とされる負荷応答性とPSRRが得られる入力電圧を確認して、効率と各特性の妥協点を見つけることが求められます。
リニアレギュレータICの出力制御(EN)ピン
ENピンを使って出力のオン/オフを切り替えることができます。BDxxIC0シリーズは、ENがLowレベルのときは VOがターンオフし、IC全体の動作もオフするため消費電流はゼロになります。ENがHighレベルのときはICがオンし、 VOがターンオンします。下図は回路例です。

ICを確実にオン/オフするために、ENピン電圧はデータシートの電気的特性に記載されている電圧を印加してください(下表はデータシートからの抜粋)。
| 記号 | Min. | Typ. | Max. | 単位 | |
|---|---|---|---|---|---|
| EN Low電圧 | VEN(Low) | 0 | – | 0.8 | V |
| EN High電圧 | VEN(High) | 2.4 | – | 5.5 | V |
※Ta=25℃、VCC=3.3V、R1=16kΩ、R2=7.5kΩ
設計参考値として、しきい値の中心値は約1.7V、許容差は±0.2V程度、温度特性は1.85V~1.5V程度(-40℃~+105℃)、全体で1.3V~2.05V程度となります。
ENピンは出力電圧オン/オフ制御ピンでありスイッチとして動作しますが、通常EN入力は短時間でHigh/Low切り替えが行われることを想定して設計されています。ENピンをHigh/Low切り替えの中点電位(前述の1.3V~2.05V付近)で固定しないでください。中間電位では出力電圧が不安定になる可能性があります。
VCCとENの立ち上げ順序に制限はありません。以下に示した図は、ENピン電圧(VEN)がHighの状態でVCCが印加された場合(左側)と、VCCが印加された後にVENをHighにした場合(右側)の出力電圧(VO)の起動(オン)波形の例です。立ち上げ順に関係なく、ロジックでいえばANDの関係で出力は起動することを示しています。また、オフに関しても順序には関係なく、VENがLow、もしくはVCCが遮断されると出力はオフします。なお、他のシリーズやメーカーによっては順序が指定されているものもありますので、ICごとに必ずデータシートで動作や条件を確認してください。

出力制御機能を使用しない場合はENピンをVCCへ接続してください。このとき直列に抵抗は不要です。以下に回路例を示します。

ENピンがHighになってから出力電圧が起動開始するまでの遅延時間は、設計参考値で約70μsです(下図参照)。ここでいう起動開始は、出力 VOUTが10%まで立ち上がったところになります。

ENピンをメカニカルスイッチで制御すると、スイッチのチャタリングにより出力電圧にもチャタリングが現れることがあります。その場合は、ENピンの手前にRCフィルタを挿入しチャタリング波形がENピンに入らないようにしてください(下図参照)。

また、ENピンとスイッチ間の配線が長いと、配線のインダクタンス成分により大きなパルス波形が発生することがあり、この電圧がENピンの耐圧を超えるとICが破壊する可能性があります。これもENピンの手前にRCフィルタを挿入し、パルス波形のピーク値を下げることで対処可能です(下図参照)。

いずれも、実機においてオシロスコープなどでRCフィルタの効果を確認して、コンデンサCの値で調整する必要があります。
リニアレギュレータICの出力コンデンサに関する注意点
リニアレギュレータICによる電源回路では、基本的に入力と出力それぞれにコンデンサが必要になります。ここからは、出力コンデンサと入力コンデンサに関する注意点を説明していきます。最初は出力コンデンサについてです。
実装基板上での配置
出力コンデンサは、リニアレギュレータのループ制御を安定にするために、ICのVOピンに極力近い位置に接続し、同様に近傍のグラウンドに接続します。可能な限りICのVOピンに近いことが望ましいですが、目安としてICから3cm以内に配置してください。

静電容量
BDxxIC0Wシリーズの場合、静電容量値は許容差や温度特性を考慮して、実容量が1μF以上になるコンデンサを選択してください。容量が小さいと発振する可能性があります。
出力容量の最大値に制限はありませんが、いくつか検討事項があります。出力コンデンサの容量を大きくすると、電源オン時の充電時間、オフ時の放電時間が長くなります。また、電源をオフしたときに出力と入力の電圧が逆転して、IC内に大電流が逆流し損傷することが考えられます。その場合、逆流バイパスダイオードや逆流防止ダイオードを回路に追加する必要があります。この詳細については、別途「端子保護」の記事で後述します。
ESR(等価直列抵抗)
出力コンデンサのESRは、以下のグラフが示す安定動作領域範囲の値にしてください。なお、このグラフはグラフ右横に示した評価回路によるもので、実際使用するコンデンサと完全に等価ではありません。また値は、IC単品及び抵抗負荷を基にしており、実際には基板の配線インピーダンスや入力電源インピーダンス、負荷インピーダンスによって変化するため、必ず最終製品の条件で発振が発生していないか十分な確認が必要になります。

セラミックコンデンサ
セラミックコンデンサを使用する場合は、温度特性が良好なX5R及びX7Rを推奨します。Z5U、Y5V、Fは容量変化が大きいため使用しないでください(下図参照)。

許容差、温度特性、DCバイアス特性により容量が公称値よりも減少しますが、最小値(1μF)を下回らないように選択してください。DCバイアス特性は、サイズが小さくなるにしたがって容量低下が大きくなる傾向にあります(下図参照)。

アルミ電解コンデンサ
電解コンデンサは安価で大容量が得られますが、低温で電解液が固まるため、急激な容量減少とESR上昇が起こるものがあるので注意が必要です。また、リニアレギュレータICの熱が電解コンデンサに伝わると電解液が高温になるため、コンデンサの寿命に悪影響を与えます。熱の影響が小さくなる場所まで離すか、基板の銅箔配線幅を電流容量が許容できる最小幅まで細くし、リニアレギュレータICからの熱伝導を抑える(悪くする)ことで対処します。
出力負荷過渡応答
負荷電流の変動が急峻な場合、出力電圧に過渡的な電圧変動が発生することがあります。この電圧変動を小さくしたい場合は、出力コンデンサの容量を大きくしてください。大容量セラミックコンデンサは高価なため、小容量のセラミックコンデンサと並列にバルクコンデンサとしてアルミ電解コンデンサを付加するとコストを抑えられます。ただし、出力容量を増やすと入力側から出力コンデンサへ充電する電荷量が増えるため、入力側電源の負荷応答性が良くない場合は入力電圧が同様に過渡的に低下する場合があります。これを防止するには、入力コンデンサの容量も出力コンデンサの容量相当まで大きくします。
リニアレギュレータICの入力コンデンサに関する注意点
続いて、入力コンデンサに関する注意点を説明します。入力コンデンサは、回路動作時に電源ラインの電位変動を抑えてリニアレギュレータICの入力を安定にさせるために必要です。特に入力配線が長い場合や、入力電源のインピーダンスが高い場合に、ICの入力電源の安定性を確保するために効果的に働きます。

実装基板上での配置
入力コンデンサはVCCピンの直近に接続し、同様に近傍のグラウンドに接続します。可能な限りICの入力ピンに近いことが望ましいですが、目安としてICから1cm以内に接続してください。基板における寄生成分の影響を可能な限り排除するためです。
静電容量
BDxxIC0Wシリーズの場合、入力コンデンサの容量値は、実容量が1μF以上になるコンデンサを選択してください。許容差、温度特性、DCバイアス特性により容量が公称値よりも減少するので、最小値(1μF)を下回らないように設定してください。
出力電流が急変する場合は、出力コンデンサの容量を大きくして過渡的な電圧変動を低減する方法を取りますが、出力コンデンサが大きくなったことにより、入力電源側の瞬間的な電流供給能力が不足する場合は入力電圧も同様に変動する場合があります。これを防止するには、入力コンデンサの容量も出力コンデンサの容量相当まで大きくします。バルクコンデンサは、セラミックコンデンサと並列にアルミ電解コンデンサなどを接続します。
ESR(等価直列抵抗)
入力コンデンサは電源インピーダンスを小さくすることが目的のため、ESRが小さなセラミックコンデンサを推奨します。前項のようにバルクコンデンサとして大容量でESRが大きい電解コンデンサを使用する場合もありますが、その場合も並列にESRが小さいセラミックコンデンサを接続することで、合成インピーダンスを下げることができます。
リニアレギュレータICの負荷と起動に関する注意点
例として使用しているBDxxIC0シリーズは、過電流保護(OCP)がフの字特性です(下図参照)。フの字特性は出力電圧と出力電流の両方を降下させるので、起動時に負荷電流がICの出力(供給)電流を上回ると、出力電圧が上昇できずICが起動できなくなります。この現象は、負荷が定電流源の場合や、起動時に出力が負電位になっている場合などに発生する可能性があります。

ICの出力電圧が規定値に立ち上がった後に定電流負荷がオンになる場合は問題なく動作しますが、その後、過熱保護回路が作動し出力がオフになるようなことがあると再起動できません。また起動できない場合、定電流負荷の電流がIC内部のVO-GND間にある静電破壊保護ダイオードに流れるため、電流値によってはチップ温度が上昇し、ICの破壊やはんだ融解が起こる可能性があります。したがって、定電流負荷での使用は推奨しません。
DC-DCコンバータ
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