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エンジニアコラム

第13回 EMC概要(1)
電磁両立性(EMC)とは何か?

電磁両立性(EMC)中級編の始まりです!

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こんにちは! ロームの稲垣です。

第13回からは、お待ちかね!?の電磁両立性(EMC)中級編を始めます。これからは、電磁両立性(EMC)主体にして、中身を濃くしていきたいと思います。これからも、どうぞお付き合い下さい!

今回は、復習の意味も込めて電磁両立性(EMC)とは何か?について述べていきたいと思います。初級編の第1回では以下の様に説明しました。

「電磁両立性(EMC)とは、機器自体が電磁雑音によって他の機器や人体へ影響を与えること(電磁干渉EMI:Electromagnetic Interference, Emission)と、外部から電磁的な影響を受けて機器が誤動作すること(電磁感受性EMS:Electromagnetic Susceptibility, Immunity)の2種類が主で、双方で障害が発生しないように両立させる必要がある事から、この様に呼ばれている」

定義として文章にするとこの様になるのですが、少しわかりにくいですね。直観的にわかりやすく説明します。皆さんになじみのある、半導体集積回路(LSI・IC)を主人公として説明していきます。

まず、電磁干渉(EMIまたはエミッション)についてです。LSI・ICは様々な種類が開発され販売されています。説明のために大まかに分類すると、

  • ①昔ながらの3端子電源(7805や7905等)や低飽和電源(LDO)の直流電源関連。これらは扱う信号が直流(DC)となります。
  • ②差動演算増幅器(オペアンプ)、電圧比較器(コンパレータ)や、音声用信号処理等。扱う信号は正弦波(サイン波)を基本とするアナログ信号・リニア信号となります。
  • ③マイコン、メモリや、ロジック等。扱う信号はデジタル信号になります。
  • ④最近多く使われるスイッチング電源やチャージ・ポンプ電源等の電源関連、LEDドライバ、LCDドライバ等の表示関連、PWMモータ・ドライバ等の駆動関連。これらのLSI・ICは、スイッチング技術を扱う製品となります。

これらの中で、電磁干渉(EMI)を発生させないのは①と②、電磁干渉(EMI)を発生させるのは③と④となります。簡単な理解としては、アナログLSI・リニアLSIでは電磁雑音の発生はなく、デジタルLSI・スイッチングLSIでは電磁雑音の発生があると認識しておくと、直観的にわかるかと思います。

DC電圧では基本波と高調波成分そのものが無く、正弦波(サイン波)では高調波成分(基本波のN倍周波数成分)が少ないことから電磁雑音が発生しにくいのです。一方、デジタルLSI・スイッチングLSIでは矩形波(パルス波)を扱うので、例えば1GHz(ギガヘルツ)付近までの高調波成分(主に奇数次高調波)が発生します。これが電磁干渉(EMI)の正体です。言い換えると、デジタルLSIやスイッチングLSIでは電磁干渉(EMI)を発生させる回路動作を行っている事になります。当然、その利点(メリット)として、デジタル動作による高速・大規模演算処理や、低電力動作によるバッテリ駆動時間の延長等を実現しています。世の中で広く使われているのは、利点(メリット)が欠点(デメリット)を上回っているからです。

次に、電磁感受性(EMSまたはイミュニティ)は、半導体集積回路(LSI・IC)の電磁雑音に対する耐性で、誤動作などを起こさない強さが求められます。電磁感受性(EMS)は、2つの観点から考えることができます。

1番目は電圧軸での考え方です。製造工程微細化による低電源電圧化は誤動作を招きやすいです。ひと昔前では5Vロジックが主流でしたが、現在では電源電圧が0.9Vのものも珍しくありません。ロジックICでは内部のしきい値電圧(HレベルとLレベルを区別するIC内部の電圧)が、例えば2Vから0.4Vまで小さくなっています。5Vロジックでは1Vの外来電磁雑音で誤動作しなかったものが、0.9Vロジックでは簡単に誤動作してしまいます。それでも0.9Vロジックを使用するのは、やはり低電力設計による利点(メリット)があるからです。

2番目は周波数軸での考え方です。半導体集積回路(LSI・IC)はそれ単体で動作させることはありません。プリント基板(PCB)に搭載し回路を構成して動作させます。LSI内部含めてプリント基板(PCB)には、配線に係る寄生成分が多く存在します。簡単なものとしては、寄生抵抗R(配線抵抗)、寄生容量C(浮遊容量)、寄生インダクタンスL(直流インダクタンス)等です。良く聞く代表的なものとして、ESR(Equivalent Series Resistance:等価直列抵抗)やESL(Equivalent Series L (=inductance):等価直列インダクタンス)があります。そして、寄生成分の中で厄介なのが容量とインダクタンスです。LSI内部やプリント基板(PCB)の至る所に存在する寄生容量Cと寄生インダクタンスLによって、共振現象が発生するからです。LCの直列共振と並列共振が、低周波から高周波まで様々な周波数で発生します。これらの共振周波数では、インピーダンスがゼロや無限大となることで、誤動作しやすい周波数が形成されます。これが電磁感受性の原因の1つです。1つと書いたのは、当然誤動作しやすい回路構成や基板アートワーク等その他の原因も多々あるからです。一般に、電磁干渉(EMI)の対策よりも電磁感受性(EMS)の対策の方が難しいと言われていますが、その理由は電磁感受性(EMS)には原因系が複数存在し、その内のどれが支配的かを見極めるのに時間と技術(テクニック)を要するからです。

さて、続いて電磁雑音の伝達経路についてお話ししたいのですが、盛りだくさんになってしまいますので次回に持ち越します。

御一読頂きまして、どうもありがとうございます。