エンジニアコラム

回路設計とEMC設計の塩梅 第24回 EMC計算法・EMCシミュレーション(9) 計算法で用いるGNUツール

2022.07.12

こんにちは! ロームの稲垣です。

第24回は、電磁両立性(EMC)の計算法・シミュレーションで使用するGNUツールについてです。

EMC計算法でシェル・スクリプト実行している事は、このコラムでも触れてきました。使用している代表的なツールはWindows上にLinuxコマンドを実装するGnuWin、高速ストリーム・ライン・エディタsed、文字列検索grep、雑音除去(ピーク検波)用の数値計算ソフトウエアGnuOctave、第23回で紹介したグラフ表示ソフトウエアGnuPlot、第22回で紹介したGUI化ツールGnuAutoHotkey等です。頭にGnuと付いているものが多いですが、ご存知でしょうか?(当然King Gnuとは関係ないですが…)

インターネットで少し調べてみると、GNUはオープン・ソース・ソフトウエアのみでUNIX風OS(POSIX規格)と関連するソフトウエア群を開発・公開するプロジェクトで、フリー・ソフトウエア財団(FSF: Free Software Foundation)が運営しています。GNUプロジェクトは、1983年の当時MIT(マサチューセッツ工科大学)の在籍していたリチャード・ストールマン氏によって開始され、ソフトウエアのソース・コード公開、その使用、研究、複製、改変、再頒布する自由を維持、保護、促進する権利を守る(Copyleft)とあります。またGNUの名称は、“GNU is NOT Unix”の再帰的頭文字となっています。面白いですね。GNUツールは大小合わせて数10種類もあり、とても全部紹介することはできないので、代表的なものを下記に列挙してみました。皆さまも、ご存知のものが多いのではないかと思います。

GRUB マルチ・ブート・ローダ
GNOME Linuxデスクトップ環境
Bash UNIX互換シェル、コマンドライン・インタプリタ
GCC C,C++,Objective-C等のコンパイラ
GDB C,C++,Objective-C等のデバッガ
Make ソース・コードから実行ファイル生成プログラム
Emacs 高速テキスト・エディタ
Sed 高速ストリーム・ライン・エディタ
Less 高速ページャ(大容量テキストの高速ページ閲覧ソフト)
Gawk AWKのGnu実装,1行プログラミング言語
Grep 文字列検索コマンド
Gzip アーカイバ(圧縮ソフト)
Tar アーカイバ(圧縮ソフト)
GSL 科学技術計算ライブラリ
Octave 数値計算インタプリタ,MATLABライク
R 統計解析プログラミング言語,多変量解析など
CLISP オブジェクト指向関数型プログラミング言語
GIMP 画像処理ソフトウエア,PhotoShopライク

・・・

私も大半を使ってきましたが、名前を見るだけでその当時のことが鮮明に蘇ってきて、ホントに懐かしいです!GNUツールの中には半導体集積回路(LSI)用の回路解析シミュレータや、CAD(Computer Aided Design)ソフトウエアの他、EDA(Engineering Design Automation)関連ソフトウエアも多数存在します。特徴としては、オープン・ソースでありながら高速・高精度・高信頼性であり、バージョンアップやメンテナンスも継続的に実施されています。この様にEMC計算法にも利用できるものが多数あるので、シェル・スクリプトに組み込んでみては如何でしょうか。

最後になりましたが、EMCコラム「塩梅」も今回で最終回となりました。2年間の短い間でしたが、皆さまとお付き合いできました事、大変ありがたく感じております。また機会がありましたら、是非お会いしましょう!

御一読頂きまして、どうもありがとうございます。

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