エンジニアコラム

Motor Notes ブラシ付きDCモーターのPWM駆動:MOSFETと回生電流の理解

2022.06.13

ブラシ付きDCモーターを1個のMOSFETでPWM駆動する際のモーター電流と回生電流の関係について詳しく解説します。MOSFETのスイッチングによるPWM駆動により、モーター電流と回生電流の動きがどのように変化するのか、そしてその関係性について一緒に見ていきましょう。

ブラシ付きDCモーターのPWM駆動とは?

今回は、ブラシ付きDCモーターを1個のMOSFETでPWM駆動する場合のモーター電流と回生電流について解説します。モーターのPWM駆動にはいくつかの方法がありますが、その中でもモーターとグランド間にMOSFETを入れてスイッチングするシンプルな方法に注目します。この場合、モーターと並列に接続しているダイオードに回生電流が流れます。この記事では、モーターに流れるモーター電流と、この回生電流の関係を詳しく説明します。
ブラシ付きDCモーターを1個のMOSFETでPWM駆動する場合の回路と電流経路を確認します。

1個のMOSFETでPWM駆動する場合のモーター電流と回生電流

ブラシ付きDCモーターを1個のMOSFETでPWM駆動する場合の回路と電流経路を確認します。

PWM駆動の回路と電流経路の確認

ブラシ付きDCモーターを1個のMOSFETでPWM駆動する場合の回路と電流経路

左は、1個のMOSFET Q1でPWM駆動する場合の回路で、モーターとグランド間にMOSFETが入りスイッチングすることでPWM駆動を実現します。
中央は、MOSFET Q1がオンの時、電源からモーター電流がMOSFET Q1を通じて流れる経路を示しています。
右は、MOSFET Q1がオフの時、回生電流がモーターに並列に接続したダイオードを通じて流れる経路を示しています。

モーター電流と回生電流の関係

このPWM駆動でのモーター電流と回生電流の関係は、以下のようになります。

  • ・Q1がオンになると、モーター電流はQ1を流れて増加し、Q1がオフする直前に最大になる。
  • ・Q1をオフになると、モーターは電流を流し続けようと動作するため、
    モーターに並列に接続しているダイオードを通じて回生電流が流れる。
  • ・回生電流は、Q1がオフになった時点が最大、つまりQ1がオフする直前のモーター電流=最大のモーター電流と同じで、その後回生電流は徐々に減少して行く。
  • ・再度Q1がオンになると、モーター電流が増加し始め、上述の一連の動作を繰り返す。

1個のMOSFETでPWM駆動する場合には、ダイオードに流れる回生電流の最大値はモーターに流れる電流の最大値と等しくなります。

PWM駆動の電流、電圧波形

PWM駆動における電流と電圧の波形は以下の図を参照してください。

ブラシ付きDCモーターを1個のMOSFETでPWM駆動する場合の電流、電圧波形

ダイオードの順方向電流の絶対最大定格の選び方

これらの情報から、並列に接続するダイオードの順方向電流の絶対最大定格は、最大のモーター電流をカバーするものを選ぶ必要があるということがわかります。また、ダイオードに流れる回生電流とダイオードの順方向電圧(VF)で電力を消費するので、ダイオードのパッケージ許容損失がこの消費電力以上のものを選ぶ必要もあります。

以上、ブラシ付きDCモーターを1個のMOSFETでPWM駆動する場合のモーター電流と回生電流についての解説でした。

ブラシ付きモーターの基本:1スイッチ回路駆動とハーフブリッジ回路駆動

ブラシ付きDCモーターのPWM駆動を理解するうえで、モーター自体の基本原理と特徴について理解しておくことが重要です。ブラシ付きモーターは、電流を流すとコイルに磁界が発生し、永久磁石と反発または引き合う力で回転します。ブラシという部品がコイルに電流を供給する役割を果たす一方で、摩耗やノイズの原因にもなります。

この種のモーターは、構造が単純で安価であること、トルクが大きく制御が容易であることから、家電製品や自動車などの分野で広く使われています。一方で、ブラシの摩耗やノイズによる寿命の低下や性能の劣化、回転数が高くなると効率が低下するというデメリットもあります。

ブラシ付きモーターの基本原理や特徴、さらには1スイッチ回路駆動とハーフブリッジ回路駆動について詳しく学びたい方は、下記ページをご覧ください。

ブラシ付きモーターの基本:1スイッチ回路駆動とハーフブリッジ回路駆動

Arduinoを用いたブラシ付きDCモーターの制御

文章:この記事では、MOSFETを用いたPWM駆動について詳しく説明しましたが、それだけではなく、電子工作にも興味がある方へ向けて、別のリソースもご紹介したいと思います。ロームが運営するサイト「Device Plus」では、「Arduinoを用いてブラシ付きDCモーターを制御する方法」についても詳しく解説しています。ArduinoとRaspberry Piは、自分だけの電子デバイスやインタラクティブなオブジェクトを作成するためのオープンソースの電子プラットフォームです。興味がある方は、こちらからArduinoを用いた制御方法の詳細な手順をご覧いただけます。

まとめ

モーター電流と回生電流の関係は、MOSFETのオン・オフの動作に密接に関連しています。MOSFETがオンのときはモーター電流が増加し、オフのときはモーターから回生電流がダイオードを通じて流れます。その際、回生電流の最大値はモーター電流の最大値と等しくなります。この知識を活用し、並列に接続するダイオードの順方向電流の絶対最大定格を選び、ダイオードのパッケージ許容損失が消費電力をカバーするものを選ぶことが重要です。以上がブラシ付きDCモーターを1個以上がブラシ付きDCモーターを1個のMOSFETでPWM駆動する際のモーター電流と回生電流の関係についての解説です。PWM駆動の理解と適切なコンポーネント選択により、モーター駆動の効率と安全性を高めることができます。モーターコントロールの世界は奥深いですが、基本的な概念の理解から始めることで、より高度な応用へと進むことができます。

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