DC-DCコンバータ|設計編
スイッチングノードのリンギング
2016.02.02
この記事のポイント
・実際のプリント基板には、回路図には示されない寄生容量やインダクタンスが存在する。
・寄生成分によって、リンギングなど問題の原因となる現象が発生する。
・基板レイアウトではこれらを念頭におき、最適なレイアウトを目指す。
DC-DCコンバータの基板レイアウトを検討する前に、実際のプリント基板には寄生の容量やインダクタンスが存在することを理解しておく必要があります。これらの影響は思いのほか大きく、回路は間違ってなくてもレイアウトによってちゃんと動作しないといったことが起きるのは、これらに対する考慮不足が原因であることがよくあります。この項では、「スイッチングノードのリンギング」について、その要因を検証します。実際の配線パターンを引く際には、寄生成分などへの対処が随所で必要になります。
本章では、以下の項目についての説明をしていきますが、各項目の理解には前後の項目を参照する必要ができてきますので、予定も含めた項目の一覧を示しておきます。
実際の回路モデルとスイッチングノードのリンギング
下の図は、同期整流タイプの降圧DC-DCコンバータ回路に対して、寄生の容量やインダクタンスを示してあります。青色のCとLがそうです。実際の回路には、プリント基板の寄生容量やインダクタンスが存在し、スイッチのオン時およびオフ時にイメージ図のような高周波のリンギングが発生します。

プリント配線のインダクタンスは、1mmあたり1nH程度です。つまり、配線が無駄に長いと配線インダクタンスが高くなります。また、スイッチング用のMOSFETの立ち上がり(tr)および立ち下がり(tf)時間は一般に数nsです。寄生成分によって発生する電圧と電流は以下の式で計算できます。

ちなみに、10nHは約10mmです。わずかな距離のようですが、電流が大きければ大きな電圧が発生することがわかります。

また、式からMOSFETのtrとtfが短ければ電流、電圧共に大きくなります。trとtfが高速であれば遷移損失が減り効率を向上させることができますが、リンギングの発生に関しては敏感になります。
リンギングの周波数帯域は f=1/時間 で計算できます。trとtfが5nsとすれば周期は10nsと考えることができますので、周波数帯域は100MHzになり、一般的なスイッチング周波数は500kHz~1MHzが多いので、その100~200倍の高周波が発生していることになります。
ここからは、この回路モデルの寄生成分によって、どのような電流が流れるかを説明します。最初の図は、ハイサイドMOSFETがオンした時です。寄生容量C2が充電され、寄生インダクタンスL1~L5にエネルギーが蓄えられ、スイッチングノードの電圧がVINと等しくなった時に、L1~L5に蓄えられエネルギーがC2と共振を起こし、大きなリンギングが発生します。

次は、ハイサイドMOSFETがオフした時で、同じく寄生容量C2が充電され、寄生インダクタンスL1~L5にエネルギーが蓄えられ、スイッチングノードの電圧がほぼGNDレベルに近づくと、L1~L5に蓄えられエネルギーが今度はC1と共振を起こし、大きなリンギングが発生します。寄生インダクタンスに蓄えられるエネルギーと共振周波数は右下の式で計算できます。

インダクタンスL4はCBYPASSの特性によって決まります。また、L3とL5は基板レイアウトによって大きく変わります。この回路はスイッチングトランジスタが外付けの例ですが、スイッチングトランジスタ内蔵のICを使う場合は、L1、L2、C2はそのICに依存し基板レイアウトには関係なく固定値となります。
このように、実際のプリント基板には回路図にはない成分が存在し、そのために、例えばスイッチングノードでは、レイアウトがよくないとスイッチングにともない大きなリンギングが発生して、正常に動作しなかったりノイズが多いなどの原因になることがあります。基板レイアウトに関してよく言われる、「配線は短く」の理由についてイメージができたかと思います。以降は、具体的な配置や配線の引き方を説明して行きます。
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