DC-DCコンバータ|応用編
ダイオードによるLDOの並列接続
2020.05.26
この記事のポイント
・ダイオードによる並列接続では、出力経路にダイオードがあるため出力電圧はダイオードのVF分だけ降下するので、LDOの設定出力電圧にVF分を追加するなどの対策が必要。
・ダイオードのVFは個体ごとにばらつきがあり、さらに負荷電流や温度によって変化するので、出力電圧精度(ロードレギュレーション)は期待できない。
・ダイオードの入れることで緩和はするが、いずれにしても2つのLDOの出力電圧の差によって、各LDOの出力電流分担が大きくばらつく。
前回、LDOの並列接続には2つの方法があることを示しました。今回は1つ目として、ダイオードを使った並列接続について説明します。
ダイオードによるLDOの並列接続
最初に、ダイオードによる並列接続の回路図を示します。この接続方法では、出力経路にダイオードがあるため出力電圧はダイオードの順方向電圧(以下VF)分だけ降下します。そのため、所望の出力電圧を得るにはLDOの設定出力電圧にVF分を追加するなどの対策が必要です。また、ダイオードのVFは個体ごとにばらつきがあり、さらに負荷電流や温度によって変化するので、出力電圧精度は期待できません。
2つのLDO出力をダイオードで接続した回路この回路も前回説明したように出力電圧が高い方のLDOから電流が供給されますが、流れる電流によってダイオードのVFが変化するため、2つのLDOの電圧差はある程度吸収できます。出力電圧が釣り合う関係は次の式で表すことができます。
VOUT1-VF1(IOUT1)=VOUT2-VF2(IOUT2)
VOUT1:LDO1の出力電圧
VOUT2:LDO2の出力電圧
VF1(IOUT1):IOUT1の時のD1のVF
VF2(IOUT2):IOUT2の時のD2のVF
例として、3.3V、1A出力のLDOで、LDO2よりLDO1の出力電圧が1%高い場合に、各LDOが負荷に供給する出力電流が、どのような分担になるかを右のグラフに示します。
負荷電流1Aのポイントでは、LDOの出力電圧差が1%でも電流分担はLDO1が0.64A、LDO2は0.36Aと大きな差が出ます。
出力電圧に1%の差がある場合の出力電流分担
次に、2つのLDO間の出力電圧差が出力電流に与える影響を右のグラフに示します。
このグラフは、LDO1がLDO2の出力電圧よりも高い時に、各LDOの出力電流の比率を表しています。両方のLDOの出力電圧がまったく同じ場合は、出力電流の比率は50%(均等に出力電流を分担)ですが、出力電圧差が大きくなるにつれて電流比率の差が大きくなって行きます。例えば、LDO1の出力電圧が+1%、LDO2が-1%ばらついたとすると、LDO1は77%、LDO2は23%と言ったアンバランスな電流出力を担うことになります。
出力電圧差による出力電流比率への影響
次のグラフは、各LDOの推奨出力電流の最大値が1Aのものを使用した時に、LDO間の出力電圧差がLDO並列回路の出力電流に与える影響を示したグラフです。
LDO間の電圧差がまったくない場合、両方のLDOの出力電流は均等になるので2A(1A+1A)の出力が可能です。LDOの出力電圧差が大きくなるにつれて、出力できる電流値は小さくなって行きます。LDO1の出力電圧が+1%、LDO2が-1%ばらついた場合は、推奨出力電流の最大値が1AのLDOでは、どちらか一方が1Aに達したところでそのLDOが最大出力状態になるので、都合2Aの出力電流能力に対して1.37Aまでしか流すことができません。
出力電圧差による最大出力電流への影響
最後にロードレギュレーションのグラフを示します。
出力電圧はLDO出力よりもダイオードのVF分降下し、負荷電流が増えるに従ってVFが大きくなるため、さらに降下します。
各LDOが本来持っているロードレギュレーションに加えて、ダイオードのVFの影響が大きく、出力電圧の変化が大きいため前述の通りロードレギュレーションはよくはありません。
ロードレギュレーション
次回は、もう1つの方法であるバラスト抵抗による並列接続について説明します。
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