DC-DCコンバータ|設計編
ノイズ対策:スナバ回路、ブートストラップ抵抗、ゲート抵抗
2017.03.14
この記事のポイント
・スナバはスイッチングのリンギングを低減することができるが、効果と損失はトレードオフ。
・ブートストラップに抵抗を追加すると立ち上げのノイズを低減できるが、MOSFETのスイッチング損失が増える。
・ゲートに抵抗を入れると立ち上がり/下がり両方のノイズを低減できるが、MOSFETの損失が増加する。また、MOSFET内蔵タイプのICには抵抗を挿入できない。
今回は、ノイズ対策の2回目です。今回の対策は、ノイズを低減する回路の追加や部品の追加でノイズを減らすアプローチを3つ説明します。
スナバ回路の追加
スナバ回路の追加は、ノイズを低減するためによく使われる手法です。今回は出力へのスナバ回路の追加ですが、入力にも使われます。この例では、スイッチングノードにRCを追加することで、スイッチングによるリンギングの高周波をGNDに逃がす動作をします。
ただし、スナバ回路の追加によって損失が生じます。効果を高めるためにコンデンサの容量を増やすと、抵抗はその電力を許容する必要あります。以下にスナバロスの式と計算例を示します。

| 損失計算例) | スナバ抵抗:10Ω、スナバコンデンサ:1000pF、入力電圧12V、発振周波数1MHzの場合の 抵抗の許容損失 スナバロス P = C ×V2 × fsw 1000pF × 122 × 1MHz = 0.144W ⇒ 抵抗の定格電力はMCR18(3216):0.25W以上必要 |
|---|
ブートストラップに抵抗を挿入
ハイサイドスイッチにNch MOSFETを使うICには、BOOTピン(ICによって名称がちがう場合あり)があります。これは、出力電圧をブートストラップ回路(多くはICに内蔵)に供給し、ハイサイドMOSFETに十分なゲートドライブ電圧を与える機能です。BOOTピンはスイッチングノードにつながっているため、ここに抵抗を挿入することで、ハイサイドMOSFETオン時の立ち上がりを緩やかにすることができます。これによって、スイッチオン時のノイズを緩和することができます。デメリットとしては、スイッチング時間が遅くなるので、MOSFETのスイッチング損失が増加します。

ハイサイドMOSFETのゲートに抵抗を挿入
これは、ハイサイドMOSFETのゲートドライバーとゲート間に抵抗を挿入することでゲートチャージを制限し、ハイサイトMOSFETの立ち上がりと立ち下がりを、俗に「なまらせる」などともいいますが穏やかにすることでオンオフ時両方のノイズを低減する方法です。ブートストラップの抵抗追加と同じように、MOSFETのスイッチング損失が増大します。ただし、この方法はスイッチ内蔵タイプのICには使えません。スイッチングが外付けになるコントローラICを使った構成でのみ利用できる方法です。

次回は、PCBレイアウトのまとめをします。
【資料ダウンロード】 降圧DC-DCコンバータ 基板レイアウトの基礎と事例
DC-DCコンバータ
基礎編
- 電源回路の代表的な7方式: 低雑音型から昇圧型まで!
- 昇圧型DC-DCコンバータのシャットダウン時の動作
- 昇圧電源の出力でのスイッチングノイズの低減 -はじめに-
- 昇圧型DC-DCコンバータの出力リップル電圧 -はじめに-
- 昇圧電源の負荷短絡によるトラブルと保護回路 -はじめに-
- 昇圧型DC-DCコンバータの最大出力電流 -はじめに-
- リニアレギュレータの基礎
- スイッチングレギュレータの基礎
- DC-DCの基礎 ーまとめー
- DC/DCコンバータとは?
設計編
評価編
-
損失の検討
- 同期整流降圧コンバータの制御IC消費電力損失
- 同期整流降圧コンバータのデッドタイム損失
- 同期整流降圧コンバータのゲートチャージ損失
- インダクタのDCRによる導通損失
- 電源ICの電力損失計算例
- 定義と発熱
- 同期整流降圧コンバータの損失
- 同期整流降圧コンバータの導通損失
- 同期整流降圧コンバータのスイッチング損失
- 損失の簡易的計算方法
- パッケージ選定時の熱計算例 1
- パッケージ選定時の熱計算例 2
- 損失要因
- スイッチング周波数を高めて小型化を検討するときの注意
- 高入力電圧アプリケーションを検討するときの注意
- 出力電流が大きいアプリケーションを検討するときの注意 その1
- 出力電流が大きいアプリケーションを検討するときの注意 その2
- 損失の検討 ーまとめー
- スイッチングレギュレータの特性と評価方法の概要
- 電源ICのデータシートの読み方:表紙、ブロック図、絶対最大定格と推奨動作条件
- スイッチングレギュレータの評価:出力電圧
応用編
- リニアレギュレータを使った電源設計のポイント
- LDOリニアレギュレータの並列接続とは
- リニアレギュレータの簡易的な安定性最適化方法
- 汎用電源ICで電源シーケンスを実現する回路
- リニアレギュレータを使った電源が起動しないトラブル事例1:手はんだによるICおよび周辺部品の破損
- フローティング動作のリニアレギュレータを使った電源設計のポイント
製品紹介
FAQ