DC-DCコンバータ|設計編
銅箔の抵抗とインダクタンス
2020.12.08
この記事のポイント
・銅箔の抵抗は電圧降下となって表れ、温度依存性がある。
・銅箔のインダクタンスは、場合によっては高電圧を発生させるので要注意。
・インダクタンスの低減には、配線を短くすることが有効。
今回は、銅箔の抵抗とインダクタンスについて説明します。なお、今回の内容は昇圧型DC-DCコンバータに限ったことではなく、PCB全般に関することですので、基板レイアウトの基礎としてとらえてください。
銅箔の抵抗
PCBのパターン配線である銅箔には抵抗があります。大きな電流が流れる条件では、導通損失により電圧降下や発熱が生じます。大電流が流れるラインに関しては、銅箔の抵抗値を検討する必要があります。
通常、銅箔の抵抗は単位面積で考えていきます。以下のグラフは銅箔の単位面積当たりの抵抗値を示しています。条件としては一般的な銅箔厚35μm、幅1mm、長さ1mmのときの抵抗値です。抵抗値は次の式で計算できます。

グラフから読み取った単位面積当たりの抵抗値RPを使うと式は左下のように変形でき、例えば、25℃のとき、幅3mm、長さ50mmの銅箔の抵抗値は、右下の計算式が示すように8.17mΩになることがわかります。

この例では、3Aの電流が流れる場合の電圧降下は24.5mVになります。また、温度が100℃に上昇すると、グラフからRPは0.63mΩに増加し、電圧降下は31.6mVに増加します。これは約29%の増加になります。この銅箔による電圧降下が許容できない場合は、基本的には配線幅を検討することになります。
銅箔のインダクタンス
銅箔にはインダクタンスが存在します。銅箔のインダクタンスは以下の式で表すことができます。また、この式を使って0.2mm~10mmの配線幅で配線長を変えた場合のインダクタンスをプロットしたグラフも示します。

この式から、インダクタンスは銅箔の厚みにはほとんど依存しないことがわかります。また、グラフからは、配線幅を2倍にしても思いのほかインダクタンスが下がらないことがわかります。結果として、銅箔のインダクタンスを抑えるには、配線長を短くすることが効果的であることがわかります。

インダクタンスL [H]のプリント配線を流れる電流が、時間t [s]の間にi [A]変化したとすると、そのプリント配線の両端には以下の電圧が発生します。
![]()
例えば、インダクタンスが6nHのプリント配線に、2Aの電流が10ns間流れると、発生する電圧は以下のようになります。
![]()
配線の寄生インダクタンスは、条件によっては大きな電圧を発生させ動作に影響を与えるだけではなく、場合によっては部品を破損させることもありますので注意が必要です。
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