DC-DCコンバータ|基礎編
降圧型スイッチングレギュレータの動作原理
2014.05.27
この記事のポイント
・DC-DC変換は、DCをスイッチングして(出力に必要なエネルギーを時間で切り分け)でACに変換(インダクタ電圧が正負に振幅)して、それを整流-平滑することで再びDCに変換することを理解する。
・電流の流れから、スイッチとインダクタの役割を理解する。各ノードでの波形を理解しないとデバッグができない。
前項では、スイッチングレギュレータは降圧、昇圧、昇降圧、反転といった変換ができることを説明しました。ここからは、最も利用することが多い降圧型スイッチングレギュレータを例にして動作原理を説明して行きます。
図31は、VINというDC電圧を、スイッチによって時間分割し、次にインダクタとコンデンサにより平滑化することで所望のDC電圧に変換する、降圧DC-DC変換の概略的な回路です。

図 31

図 32
DC-DC変換のプロセスを簡単にいうと、DCを一旦ACに変換して、それを平滑しDCに戻すということになります。例えばPWM動作で説明すると、S1=ON/S2=OFFでVINを給電する時間を25%、S1=OFF/S2=ONでゼロボルト(GND)状態を75%のパルス周期にし、そのパルスを平均化すると25%のDCになります。VINが10Vだとすると、Voは25%の2.5Vになります。これは、面積で考えるとイメージしやすいと思います(図33参照)。

図 33
実際のPWMでは、平均化された出力の負荷電流が変動しますので、ON時間がずっと一定では負荷電流に依存して電圧が上下してしまいます。それではレギュレータではないので、出力が降下するとON時間を増やして、より多くのエネルギーを入力から送って、出力電圧を上昇させます。十分に出力電圧が回復したら、今度はON時間を短くして出力の上昇を止めます。
スイッチングの場合は見ての通り、出力に必要な電力を必要な分だけ入力から取り込んでいると考えることができます。これに対しリニアレギュレータはON/OFFしませんので、100%デューティサイクル、つまりずっと入力が入りっぱなしの状態です。同じように10Vを2.5Vにしようとすると、差分の7.5Vに該当電力は熱として捨てることになります。スイッチングレギュレータの効率が高い理由は、この仕組みの違いにあります。
この記事のポイント
・DC電圧を切り刻み(スイッチング)、必要な電力だけを出力に送るので効率がよいことを理解する。
降圧型非同期(ダイオード)整流式スイッチングレギュレータの回路と動作
図34は図31をもう少し具体的にしたものです。この回路は非同期整流式もしくはダイオード整流式と呼ばれるものです。S1はスイッチで(通常トランジスタ)、S2はダイオードに置きかえられていますが動作は同じです。赤はS1がONの時の電流経路、緑はOFF時の経路です。

図 34
図35は各部品での電圧と電流波形です。前項で、「DC-DC変換のプロセスは、DCを一旦ACに変換してそれを平滑する。」と説明しましたが、ここで「AC(交流:周期的に大きさと正負が変化する)に変換されているの?」と思われた方は、インダクタの波形を見て頂ければACであることがわかるはずです。

図 35
余談ですが、インダクタの電流波形が傾いているのは、インダクタ電流の変化率と電圧が比例するので、電圧を印加していくと電流が一定の傾きで増加するためです。V=L×(dI/dt) で表すことができます。

図36:具体的な非同期整流降圧回路とスイッチON時の電流経路

図37:スイッチOFF時の電流経路

図 38
図36と37は、図35の回路を実際の回路に置き換えたものです。スイッチS1はMOSFETで置き換えられ、S2はショットキダイオードに置き換えられています。図35では割愛されていた比較回路と制御回路も示されています。気付かれた方もいると思いますが、この回路はリニアレギュレータの動作原理で説明した帰還制御回路です。出力電圧は内部の比較回路に引き込まれ、基準電圧と比較されます。ここでは比較回路という表現を使っていますが、リニアレギュレータのエラーアンプと同じです。リニアレギュレータでは、エラーアンプの出力が直接的に出力トランジスタを制御して連続的にループ制御をしていしたが、スイッチングレギュレータでは、エラーアンプの出力はスイッチ(トランジスタ)のON/OFF時間(デューティサイクル)の制御に置き換えられます。
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