DC-DCコンバータ|基礎編

昇圧型DC-DCコンバータの最大出力電流 ローサイドスイッチの最大電流と出力可能な最大出力電流

2023.01.26

この記事のポイント

・昇圧型DC-DCコンバータの最大出力電流は、ローサイドスイッチの電流能力だけでは決まらない。昇圧比、変換効率、インダクタリップル電流によりローサイドスイッチの電流能力より大幅に減少する。

・昇圧型DC-DCコンバータを選択する時は、必要な出力電流から昇圧比などの使用条件からローサイドスイッチに必要なスイッチ電流値を求めてから製品を選択する必要がある。

・ローサイドスイッチには入力電流値だけではなく、インダクタリップル電流による電流変動のピーク値を流せる能力が必要となる。

まず、最初の「ローサイドスイッチの最大電流と出力可能な最大出力電流」についてです。

ローサイドスイッチの最大電流と出力可能な最大出力電流

降圧型DC-DCコンバータでは製品はローサイドスイッチの最大電流スイッチング能力で規定されます。例えば1Aのスイッチング能力を持った製品の場合、インダクタのピーク電流が1Aまでスイッチングできます。しかし、これは入力側での電流駆動能力であり、昇圧した結果の出力電流は昇圧比と変換効率にも依りますが大幅に減少する事になります。昇圧型DC-DCコンバータにも様々な制御方式がありますが、本稿では電流モードの固定周波数PWM制御で、昇圧スイッチの最大電流が電流制限により規定されている製品の最大出力電流について解説します。

最低限必要なローサイドスイッチのスイッチング電流能力の検討

昇圧型DC-DCコンバータを選択する時、まずは入力電圧と出力電圧・出力電流の要求仕様に対してローサイドスイッチにどの程度の電流駆動能力が必要かを概算します。

仮にVIN=3.3V から昇圧してVOUT=5V/IOUT=1Aを作るという条件の場合、出力の要求から出力電力POUTはPOUT=VOUT×IOUT=5V×1A=5Wになります。効率ηを90%とした場合、入力電力PINは、PIN=POUT÷η=5W÷0.9=5.56Wとなり、入力電流IINは IIN=PIN÷VIN=5.56W÷3.3V=1.68A  となります。
 *効率ηは入力電圧、出力電圧、電流値、使用するインダクタなどにより変化します。

昇圧型DC-DCコンバータの出力電流と入力電流

昇圧型DC-DCコンバータはこの1.68Aの直流入力電流をスイッチングすることになりますが、入力電流IINはインダクタリップル電流IRIPPLEにより増減している電流の平均値となります。スイッチに流れるピーク電流ISWPは入力電流にインダクタリップル電流の半値を加算した電流が流れます。インダクタリップル電流を最大入力電流の30%とするとスイッチに流れるピーク電流ISWP

 ISWP=IIN+0.5×IRIPPLE=IIN+0.5×30%×IIN=1.15×IIN=1.15×1.68A=1.93A

となり、2A程度の電流をスイッチングできるローサイドスイッチを持つ製品を選択する必要があります。

入力電流とインダクタリップル電流によるスイッチのピーク電流値

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