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2018.08.07 DC/DC
前回、諸条件に対する損失要因を説明しました。今回から、アプリケーションの要求仕様に対応するために、動作などを検討する際に注意する損失要因と対応策を説明していきます。
スイッチング周波数を高めてアプリケーションの小型化を検討するときの注意
スイッチング方式のDC/DCコンバータ回路において、スイッチング周波数を高くすると、外付けのインダクタやコンデンサの値を小さくすることができます。結果として、より小さな形状、パッケージのインダクやコンデンサを使うことができ、回路が必要とする実装面積が小さくなり、機器の小型化が可能になります。小型の携帯機器ではよく検討されるアプローチです。
<周波数 が高くなると大きくなる損失要因>
①ゲートチャージ損失
②スイッチング損失
③デッドタイム損失
スイッチング周波数 fSW が0.1MHzから2MHzに20倍速くなったので、計算式がわかるように、どの損失電力も単純に20倍になります。しかしながら、全体の損失電力におけるそれぞれの値の割合を考えると、②スイッチング損失と③デットタイム損失が支配的になります。以下に、スイッチング周波数に対する、それぞれの損失をグラフに示します。
全体損失を具体的な数値で示すと、スイッチング周波数が0.1MHz時は0.632W、1MHz時は1.208W、2MHz時は1.848Wとなり、スイッチング周波数が高くなると増加するのは明らかです。
効率を計算してみると、出力電力は10W(5V/2A)、入力電力は出力電力+損失電力から、0.1MHz時は94.1%、1MHz時は約89.2%、2MHz時は84.4%と、実際にありそうな1MHzから2MHzへの変更では、4.8%もの効率低下が生じることになります。
考察および対応策
スイッチング周波数を高くすることで、小さなサイズの外付けインダクタとコンデンサを使用できることから、電源およびアプリケーションの小型化を図ることが可能です。しかしながら、スイッチング周波数の高速化によって、スイッチング損失とデッドタイム損失が増加し効率が低下します。つまり、スイッチング周波数の高速化による小型化と損失増加(効率低下)は、トレードオフの関係にあると言えます。
対応策としては、アプリケーションの要求をもとに、許容できる損失(効率)とサイズの間でスイッチング周波数を設定することになります。サイズ最優先であれば最も速いスイッチング周波数、効率最優先であれば最も遅いスイッチング周波数を選ぶことになりますが、多くの場合、サイズと効率においてバランスの取れた妥協案で対応することになります。
・スイッチング周波数を高くすることで、電源およびアプリケーションの小型化が可能だが、損失が増加し効率が低下する。
・増加する損失の中で、スイッチング損失とデッドタイム損失が支配的。
・スイッチング周波数の高速化による小型化と損失増加(効率低下)はトレードオフの関係にある。
・多くの場合、サイズと効率においてバランスの取れた妥協案で対応する。