DC-DCコンバータ|応用編
リニアレギュレータを使った電源が起動しないトラブル事例 事例3 : 貫通電流による起動トラブル①
2022.05.31
この記事のポイント
・フォールドバック電流制限回路を搭載したリニアレギュレータが給電する回路ブロックに、貫通電流のような大きなピーク電流が流れる場合に起動のトラブルが生じることがある。
・このトラブルを未然に防ぐには、給電する回路ブロックに過大なピーク電流がないことを設計・評価段階で実測して確認しておく必要がある。
事例3:貫通電流による起動トラブル①
リニアレギュレータの出力に接続されている、ある回路ブロックの回路電流特性を図1に示します。この回路は電源電圧が1.8V以上供給されると動作するように設計されていますが、回路が安定動作する前の0.7V付近で大電流が流れています。これは、動作電源電圧以下での回路動作に関して十分な検証がなされていない場合にあり得ることで、回路動作が不定だったり予期せぬ動作をしたりすることで、電源とグラウンド間に貫通電流が流れている状態です。

図1. ある回路ブロックの回路電流特性

図2. 貫通電流がある回路ブロックへの
給電とフォールドバック電流制限
この回路ブロックを、「事例2:定電流負荷による起動トラブル」で説明した、フォールドバック電制限回路を搭載したリニアレギュレータの出力に接続した場合を図2に示します。図1のXY軸を逆にした特性を電流フォールドバック特性(黄緑の曲線)と重ね合わせた図になっています。
回路ブロックは?点から起動を開始し、電源電圧(リニアレギュレータICの出力)が約0.7Vになると貫通電流が急激に流れ始め、図1にあるように800mAほどの電流を流す(?点)必要があります。しかし、リニアレギュレータICのフォールドバック電流制限により?の時点で電流が制限され、必要な電流を供給できないため出力電圧が上昇せずに起動トラブルが起こります。
実際には起動時のノイズや寄生素子の影響で結果として起動する場合が多いので、量産になり多数のなかから起動しない個体が見つかり、初めて設計や評価の不備に気づくことがあります。このトラブルを未然に防止するには、リニアレギュレータが電源を供給する回路ブロックの電流特性を実際に測定して、過大なピーク電流がないことを確認する必要があります。
DC-DCコンバータ
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